史実だけ見てもわからない 直木賞作家・朝井まかてが語る「幕末という時代」 (3/3ページ)
もちろん、外国や外国人によって日本にもたらされたものは多いわけですが、それは「維新」ありき、「近代化」ありきの見方であって。彼らの感覚的な日本観を、私はリアルに書きたかったんです。
――そこは史実だけ見ていてもわからないところです。
朝井:大雑把な言い方をすると、フランスは幕府についていましたし、イギリスとアメリカは倒幕派についていましたよね。当然、各国それぞれに思惑があって、彼らの覇権拡大闘争の一環として日本で動いていたわけですが、維新が成って日本の近代化が進むと、今度は「近代化によって日本人はいいところを失った、あんなに幸福そうな人々はいなかったのに」なんて惜しむんですからね(笑)。
近代化を急いだあまりに何を失ったのかは、今の日本人ならわかることですが、当時の人はまだわからなかったはずです。ただお慶の逡巡、疑問、予感めいたものに象徴させた通り、本作の重要なテーマにもなりました。
(聞き手・構成:山田洋介、写真:金井元貴)