恐怖心の感染力は新型コロナウイルスよりも強力。不安が人から人へと急速に広がる理由 (2/5ページ)
ここは受けた感覚情報の中に危険に関連した刺激があれば、すぐさまそれをキャッチする。
すると、そのサインを視床下部や脳幹といったほかの領域にも伝え、各種機能が連携した防御反応を始動させる。こうして生じるのが、強い恐怖感や体が固まるような反応、あるいは闘争・逃走反応である。
ライオンの存在に気がついたレイヨウが感じる直接的な恐怖は、こうした脳内の働きによるものだ。だが、恐怖の伝染にはさらに別のメカニズムがある。
・怯えた仲間の行動がスイッチとなって恐怖が伝染する
逃げ出したレイヨウを見てそれに続くほかの仲間の行動もまた自動的なものだ。
しかし、これはライオンの襲撃が直接引き起こすものではなく、怯えた仲間の行動がスイッチとなっている。
一瞬体を硬らせ、警戒の鳴き声を上げてさっと走り出す個体の行動を見て、群れ全体がその恐怖を感じ取り、それに応じて行動するのである。
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こうした動物と同じく、人間もまた他人の恐怖にえらく敏感だ。
実験的な研究からは、その敏感さは「前帯状皮質」という、右脳と左脳をつなぐ繊維の束を囲んでいる領域が関係していることが分かっている。
恐怖の表情を浮かべた他人の顔を目撃した人の脳内では、前帯状皮質が発火する。すると、この前帯状皮質から他人が怯えているというメッセージが扁桃体へと伝えられ、先述した防御反応が起きる。
こうした恐怖の伝染は、まったく見知らぬよそ者よりも、同じグループ内の仲間からの方が強く伝わる。