天王星の大気がはぎ取られていた。30年前のフライバイのデータで明らかに(NASA)

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天王星の大気がはぎ取られていた。30年前のフライバイのデータで明らかに(NASA)
天王星の大気がはぎ取られていた。30年前のフライバイのデータで明らかに(NASA)

MarcelC/iStock

 1977年に打ち上げられたNASAのボイジャー2号は、今や太陽系から離れ、星間宇宙を旅している。

 だが、30年以上前のまだ太陽系の中を旅していた頃、天王星まで8万キロの上空に接近し、その巨大氷惑星の神秘的な姿を私たちに見せてくれたことがある。
 
 天王星の観測からは、新たに2つの環と、11の衛星が発見されたほか、表面の温度はマイナス178度以下にまで下がることが判明している。

 意外なことに、これ以外にも科学者たちが見逃していたデータがそこにはあったのである。天王星の大気が、磁場構造をともなったプラズマの巨大な泡により流出していたというのだ。
・横倒しで自転する奇妙な惑星、天王星

 天王星は奇妙な惑星だ。自転軸が98度ほど傾いており、太陽系のほかの惑星とは違って、横倒しのような状態で回転している。

 そのために磁場の軸が自転軸から60度ズレており、天王星が回転すると、どこかアメフトのボールのように磁気圏がふらつくという特徴がある。

 今回のNASAゴダード宇宙飛行センターの研究グループは、かつてボイジャー2号が集めたデータを再度確認し、この奇妙な磁場について調査を進めてみることにした。

 こうして、データを新しい視点から、より精密に検証してみたところ、小さな不規則な曲線が見つかったのだそうだ。

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NASA/Scientific Visualization Studio/Tom Bridgman

・一定の磁場構造をともなったプラズマの泡「プラズモイド」

 その小さく歪んだラインは「プラズモイド」だったという。プラズモイドは「磁気圏尾部」とも呼ばれ、太陽風で吹き流されている惑星の磁場の端の部分に、大気から吸い取られたプラズマの巨大な泡がくっついているような構造をしている。

 これは惑星から大気が剥ぎ取られているというサインでもある。

 天王星でプラズモイドが発見されたのは初めてのことで、45時間かかったボイジャー2号のフライバイの最中、わずか60秒しか生じていなかった。そのためにデータのノイズのように見えてしまい、当時の研究者からは見過ごされていたのだ。

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CoreyFord/iStock

・他の太陽系惑星でも大気流出が起きている

 こうした大気の流出プロセスは天王星だけでなく、金星、木星、土星、さらには地球においてすらも起きている。こうした惑星では、粒子が惑星の力を逃れて、宇宙へと流れていくために、少しずつ大気が失われているのだ。

 非常に極端なケースでは、大気がほとんど失くなってしまうこともある。これが起きたのが火星だ。

 今は乾燥し、荒涼とした風景が広がる火星だが、かつてはまったく様子が違っており、分厚い大気と豊かな水があり、生命すら存在していた可能性があると考えられている。

 だが、40億年にもわたり大気が宇宙へと流出した結果として、現在のような姿になってしまった。

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Aynur Zakirov from Pixabay

・かつての天王星はどのような姿だったのか?

 はたして、火星のように、天王星も今とはまったく違う姿だったのだろうか?

 今のところ、ほんのわずかにその大気流出を垣間見た程度にすぎず、それによってこれまで天王星がどのような影響を受けてきたのかは定かではない。

 「宇宙船がサッと近くを通過しただけで、地球全体について推測しようとしたとしましょう。サハラ砂漠や南極の様子なんて分かりっこありませんよね」と、NASAのジーナ・ディブラッキオ博士は語っている。

 この発見は『Geophysical Research Letters』に掲載された。

References:nasa / space/ written by hiroching / edited by parumo
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