女性差別?女性を守るため?かつて日本に生理中の女性を隔離する「月経小屋」が存在した理由

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女性差別?女性を守るため?かつて日本に生理中の女性を隔離する「月経小屋」が存在した理由

「恥ずかしい」「穢れ」そんな考えのため多様化が遅れた日本の生理対策

以前日本の生理用品の歴史についてご紹介しましたが、現在日本女性の使用している生理用品は「ナプキン」がほとんどです。ナプキンと同じくらい古くから使用されている「タンポン」は、2割程度の女性にしか使用されていません。

日本の生理用品にも歴史あり!昔の女性は「生理の日」どうしていたの?

しかし欧米を見てみると「ナプキン」「タンポン」だけでなく、「月経カップ」「ムーンパンツ」など便利で多様な生理用品が使用されていることが分かります。

日本でも最近は「布ナプキン」など普及してきていますが、人によっては合わないこともあり、やはり選択肢の少なさは否めません。

(日本で初めて発売されたナプキン「アンネナプキン」/出典:女性雑誌の生理用品広告集)

日本で生理用品の選択肢が多様化しなかった背景には、日本社会に
「月経中の女性は穢れている」
「月経について口にするのは恥ずかしいこと」
という考え方が「常識」として存在していたことがあります。

このことは生理用品の選択の幅を狭めただけでなく、生理中の女性を隔離するための施設「月経小屋」まで作り出しました。

日本にかつて実在した「月経小屋」とは?

「月経小屋」とはその名のとおり、生理中の女性が他の家族や地域の人と接することがないように隔離するために使用されていた施設です。

とは言っても全国各地に必ず設置されていたわけではなく、主に瀬戸内海や伊豆諸島など西南日本の島々に存在するものでした。地域によって「タビゴヤ」「ヒゴヤ」「よごれや」「不浄小屋」などと呼ばれていましたが、いずれにせよあまり「喜んで入りたい!」と思えるような名称ではありません。

それもそのはず、生理中の女性をこのような小屋に隔離する目的は
「生理中の女性は不浄である」
「男性は生理中の女性に接すると危険である」

という考えにもとづくものだからです。

このように月経中の女性を「穢れている」として隔離する習慣は、なにも日本固有のものではありません。

海外でもアメリカのインディアンやミクロネシア、ニューギニア、インド、南アフリカなどの諸民族の間に似たような習俗があり、国や地域によっては1970年代に入ってからも
「生理中の女性と同じ食器を使った人は死ぬ」
「生理中の女性が花や果物に触るとしなびる」
などと信じられていました。

「小屋生活」の期間の「ラクな部分」と「とんでもなくしんどい部分」

さて「月経小屋」での生活がどのようなものであったのかは、現代では想像するしかありません。

これについては個人個人で感じ方に差があったでしょうが、
「ここに入っている期間は家事も育児もしなくて良いので、ただでさえしんどい生理中はむしろゆっくり休めて助かるわ」
という、現代の「生理休暇」的な考え方をする人や地域も存在したようです。

しかし

・近所の人々にいつが生理の日かバレバレになってしまう
・隔離されている有様を、通りがかりの子供にまでバカにされる

などの屈辱的な思いをする女性も、決して少なくはありませんでした。

「月経小屋」が現代は消えていることからも、多く女性の感覚ではまさに「女性蔑視の象徴」であり、かなり屈辱的なものだったことがうかがい知れます。

生理中の女性を不浄として隔離する風習は、日本では1872(明治5)年に「今より産穢憚り及ばず候事」という法令が発布され、公式には廃止されました。
しかし現実には、第二次世界大戦後まで「地域の習俗」として残っていたようです。

出典

日本で生理用品が進化しなかったわけ 昔の女性も悩んでいた 江戸ガイド/下着を着けなかった江戸時代の女性。生理になったときの驚きの処理方法とは ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「月経小屋」

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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