炎の中から2匹の子猫を助け出した勇敢な消防犬、ニップの物語(アメリカ) (3/4ページ)
消防車から落ちて怪我をしたこともある。その代わり、夏の間にロングアイランドに住む消防士の家で過ごして、楽しいときを過ごすこともあった。
ニップはすべての鐘の音や合図の音を聞き分けることができ、どの信号が緊急要請に応えるものか正確にわかっていて、間違えることはなかった。
火災現場では、消防士たちの活躍を監督し、なにか間違っていれば警告したりもした。
ニップの勇敢で英雄的行為は数知れない。
火事が起これば、人間の消防士たちと一緒に出動し、真っ先に消防車から飛び降りて、燃え盛る建物の中に率先して飛び込んでいっては、逃げ遅れた人がいないか探す。人間(または猫)を見つければ、懸命に吠えて、消防士たちがかけつけるのを待つのだ。
1936年、2匹の子猫を助けてから1年後、ニップはその勇敢な行為を表彰され、4つの団体から4つのメダルを受けた。
・終わりは突然やってくる
1939年、ニップは16歳となった。高齢ではあるが、まだあと数年は元気に活躍できるはずだったが、その終わりは突然やってきた。
11月9日、消防署の前で遊んでいたとき、車に轢き逃げされてされてしまったのだ。
ニップは自力でなんとか消防署の中にはいずって戻り、消防車の座席に飛び乗ろうとしたが、力尽きてステップのところで息絶えた。
ニップのこれまでの勇敢な働きをたたえるために、203分署の消防士たちは、唯一無二の宝である彼の剥製を作らせた。ニップの剥製は、1974年に203分署が解散するまで、署内に大事に置かれていた。
1939年にこの世を去ったニップの剥製。現在は、ニューヨーク消防博物館に展示されている。
実はニップは本当の名前ではないそうだ。新聞記事のほとんどは、ニップのことを"ニガー"あるいは"ニグ"と呼んでいた。