くるり『ハローグッバイ』でよみがえる“左斜め上の恋” (3/3ページ)
隣や向かいならまだ分かるが、おそらく「斜め向かい」は特に近いわけではない。
そう考えると、私にとっての左斜め上のロッカーも、比較的近くではあるものの、隣や上のロッカーの方が近い。何より、あの美術の授業以前は気にもとめなかった位置関係である。
そうか。きっと、何でもないようなロッカーの位置さえ特別なものに思えるのが恋なのだ。
振り返ればあの頃の私は、他にもほんの些細なことにいちいち共通点を見出したり運命を感じたりしていた。あらゆる何でもないようなことが特別に思えてしまうのが恋なのだと思った。
『ハローグッバイ』の歌詞はこう続く。
「いつからか あなたのこと忘れてしまいそう」
高校を卒業して6年。東京でいろんな人に出会って、いくつか恋愛もした。
地元の同級生とは疎遠になり、彼とも一度も会っていない。多分これからも会うことはないだろうし、彼は私のことを忘れているかもしれない。
それでも私は、『ハローグッバイ』を聴けばいつだってあのロッカーに戻れるのだ。
これから誰を好きになっても、彼は私の心の片隅で、あの時のように笑っているだろう。それも多分、心の左斜め上あたりで。
(文:絶対に終電を逃さない女、イラスト:オザキエミ)