「ああ、幸せなおれ」。夢枕獏、格闘小説誕生の舞台裏! (2/5ページ)

日刊大衆

 この死刑囚たち、柳をはじめとして、スペック、ドリアン、ドイル、シコルスキー、いずれも凄い奴らなのだが、全員、ファーストシーンでは、それぞれ牢に入れられている。ということは、みんな、どこかで誰かに敗れて一度は捕まってるんじゃないの。ならば、この外伝は、柳龍光を、誰かが捕まえる物語にしようーーそう考えたのである。

 つまり、最凶死刑囚編の前の前日譚のようなものを書けばいい。これならば、本編に与える影響は少なくてすむし、読者の本編に対する思い入れを、大きく損なうこともないであろう。

 では、その捕まえる方を誰にするか。

 よし、愚地克巳に兄がいたことにしよう。その兄貴が様々な逆境を乗り越えて、最後に柳龍光と対決する。これだよ、これ。そもそも、克巳は、愚地独歩の養子だし、実は兄がいたという設定も、それほど無理がないのではないか。

 タイトルは「ゆうえんち」。実は世の中には、強いのに地下闘技場に行かない連中がいて、そいつらが闘う場所がある。彼らはなぜ、地下闘技場に出場しないのか、それは、地下闘技場の試合にはファイトマネーがないからである。だから、金の欲しい強い連中が集まるのは、“ゆうえんち”の方。いいじゃん、これ。

 書き出した時に考えていたのはこれくらい。あとは書きながら考えるといういつものやり方でいこう。

 と決心して、書き出したのである。

 一年ほどで終わるつもりが、長くなってしまったのはいつもの通りだ。

 これには理由がある。

 Aというキャラを立てたいときには、やられ役のBというキャラが必要であり、このBの強さを立てるには、Cというキャラが必要でーーとやっていくと、主人公・葛城無門と闘うキャラを四人出すとすると、単純計算で、八人のキャラが必要になってしまうということになってしまったのだ。しかも、書いてゆくと、ことはそんなに簡単なことではない。あれもやりたい、これもやりたいということで、書きたいことがどんどんふくれあがってしまい、ついに三年目突入ということになってしまった。

 もともとやっていた連載が十本。

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