生物の体を短時間できれいに透明化する技術が開発される(オーストリア研究) (2/3ページ)
そうした問題を解決したのが「ディープクリア」だ。
この方法を開発する鍵となったのが、複数の薬品を使用すると相乗効果が発揮されて、速やかに組織を洗浄し、色素を除去できるという発見だったそうだ。
化学処理の時間が短くなるということは、デリケートな標本の劣化を防ぐことにもつながる。
ディープクリアで透明になった標本からは、重要な生体分子を検出することもできるという。つまりスケスケのボディの中にある特定のタンパク質、DNAマーカー、RNAといったものを観察できるということだ。
利用できる対象が幅広いだけでなく、いろいろなスケールでイメージ化できるのも凄いところだ。
神経細胞の結合や分裂中の細胞クラスターといった小さな構造を観察できるかと思えば、最新の光シート顕微鏡を利用することで、生き物全体の3Dモデルをあっという間に作成することもできる。
ゼブラフィッシュの増殖細胞(ピンク)と神経系(緑)イカの透明化 image by:TU Wien / Max Perutz Labs
・人間が進化で失ったものを解き明かしてくれるかも
研究チームは、ディープクリアによってこれまでは難しかった分子や細胞の研究が進むことを期待しているそうだ。
たとえば線虫、魚、サンショウウオなど、中枢神経系を再生するという興味深い能力がありながら、あまり研究が進んでいない生物がいる。
人間や哺乳類に同じことができないのは、進化の過程で何らかの分子プロセスが失われたからと考えられるが、ディープクリアならそれが具体的にどのようなものなのか解き明かしてくれるかもしれない。
そうした謎が解明されれば、事故による体の麻痺など、人間の治療に役立つ可能性もあるとのことだ。