いじめられっ子の少女が奇跡を起こす物語。その慈愛に満ちた眼差しの意味とは? (1/2ページ)

新刊JP

『ブ・デ・チ』(幻冬舎刊)
『ブ・デ・チ』(幻冬舎刊)

本作を「いじめられっ子が奇跡を起こしながら、周囲の少年・少女たちを成長させていく物語」と表現してしまえば、おそらく簡単なのだろう。しかし、この物語、そんな一筋縄ではいかなそうだ。

精神に深く根差した世界観が繰り広げられ、「いじめっ子」側の事情もじっくりと深掘りしていく。
何よりも「いじめられっ子」である少女の存在感が、物語を進めていくごとにだんだんと大きくなる。ブレない強さを持ち、「いじめられても平気」と平然とし、むしろいじめっ子たちに対して全てを受け入れ、慈愛の眼差しを投げかける。この存在感は、一体何だろう――。

それが、『ブ・デ・チ』(鶴石悠紀著、幻冬舎刊)の主人公であり、千葉の公立中学校に通う神山エリだ。

■多感な中学1年生たちと「いじめられっ子」

「ブ・デ・チ」とは「ブス」「デブ」「チビ」の略語で、エリと同じクラスのいじめっ子である健一と広大が名付けたものだ。
ひときわ小柄なエリは、目がつけられやすい存在だった。
しかし、当の本人は何処吹く風といった具合。なぜなら、変に同情されたり、哀れに思われるよりもよほど気楽で、自分自身の存在を否定するようなあだ名ではないと考えていたからだ。

中学1年生という多感な時期を過ごす少年少女たち。
クラスメートの自殺未遂事件、いじめっ子たちそれぞれが抱えている複雑な家庭環境が明かされながら、11月初めにはエリたちのクラスに転校生・瀬戸太一がやってくる。

そして、12月初旬に行われる「音楽祭」で、物語は大きく動くことになる。

エリたちは音楽祭で東日本大震災の被災地復興を応援するチャリティーソング『花は咲く』を合唱することに決める。しかもただの合唱ではなく、独唱など少しアレンジを加えたバージョンだ。

そして本番。ステージ上で独唱するはずだった美和の声が出ない。ちょっとしたざわつきの中で、いじめっ子グループの一員である広大が「ブデチ、お前代わりにやれ」と、エリを前へ突き飛ばす。

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