間違ってない? 「なし崩し」の正しい使い方 (2/3ページ)
・彼は、自分がせっかく手にした権力をなし崩しに失ってきたのだ。
◇事実の積み重ねによる既成事実化の意味で使う場合
また、「事実を積み重ねて、既成事実化すること」の意味での例文も見てみましょう。
・正式な法改正をせずに、なし崩しにする。
・感染対策が確立する前に、なし崩し的に経済活動の全面再開に進むことになった。
・自衛隊の海外派遣がなし崩し的に拡大してしまわないか。
新聞・ニュースなどでは、このように、なし崩し的なやり方をする政府・自治体などを批判する時に使われる例が多いようです。
もちろん、それ以外の場面でも使用することができ、
・作者は読み切りのつもりで描いたのだが、掲載紙には「次号へ続く」と書かれており、なし崩し的に連載する羽目になった。
・恋人になったきっかけなど、もうあまりよく覚えていない。ふたりで飲みに出かけ、あとはなし崩しにそうなった。(山本文緒『ブルーもしくはブルー』角川文庫)
・そのままなし崩しで結婚まで持ち込まれてしまうだろう。(井上堅二『バカとテストと召喚獣 3.5』ファミ通文庫)
などのように、幅広い用例が見られます。
■「なし崩し」の誤用例
「なし崩し」本来の意味を理解していないと、勘違いが生まれます。
中でも、「物事を少しずつ変化させ、うやむやにしてしまうこと」という意味の「うやむや」(はっきりしない、曖昧でいい加減だ)というニュアンスにばかり注目し、「なし崩し」=「ごまかし」だと思い込み、「借金や約束などをなかったことにする」という意味だと誤解しているパターンが多いようです。
他にも、漢字変換が「無し崩し」であると誤解し、「なかったことにする」「崩してなくしてしまう」という意味だと思っている人もいます。
正しい漢字表記は「済し崩し」であり、「済す」は借金の返済を意味しています。
つまり、「なし崩し」には、「少しずつ導入してうやむやにする」という意味はありますが、それは「なかったことにする」ではありません。