天才テリー伊藤対談「佐藤蛾次郎」(3)渥美さんが仁義を切る大サービスを (1/2ページ)
テリー 僕らから見ると、渥美清さんって伝説的な人になってしまったわけですが、正直言って、どういう存在なのかが今でもよくわからなくて。
佐藤 そうか、俺はかわいがってもらったからね。
テリー 実は2回ほど「男はつらいよ」の撮影現場にお邪魔したことがあるんです。でも、渥美さんってふだんは人見知りだし、あんまりしゃべらない方でしたよね。挨拶だけしてスーッと行っちゃう、みたいな感じでした。
佐藤 そうそう、基本的にはそういう人だよ。よく一緒に御飯を食べに行きましたけどね、撮影中に「腹減ったなあ」なんて言うと、「六本木の寿司、行こうか。あそこ高いけど、うまいぞ」って、連れて行ってくれてね。
テリー そういう場では、どんな話をするんですか。
佐藤 そうだなぁ、最近見た映画や本の話とか。
テリー やっぱりふだんから物静かな感じなんだ。
佐藤 実は、渥美さんがすごいサービスをしてくれたことがあったんだよ。「お前、六本木の店なんかで歌ったりすること、あんのか」って聞かれたことがあって、「ありますよ」「じゃあ、その店行こうか」という話になった。店に着いたら「蛾次郎、『男はつらいよ』歌えるか。じゃあ、ちょっとバンドに言ってこい」と。
テリー へえ、カラオケじゃなくて生バンドが演奏する店なんですね、贅沢だ。
佐藤 で、イントロが始まったら「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい‥‥」と寅さんの仁義を切ったんだよ。その場にいたお客さんは「ワーッ!」ってもう大喜びしてね。
テリー そりゃそうですよ。渥美清の生仁義だもの。
佐藤 でも、それが終わったら「お前、行け」ってマイクを渡されて、歌は俺が歌ったの。