これって方言? 「せわしない」の本当の意味 (2/4ページ)
つまり、「せわしない」も「せわしい」も、同じく「いそがしい。せかせかしている」という意味を表しているのです。
◇「せわしない」は方言? 標準語?
さて、冒頭で「関西弁のやり取りが似合う」と書きましたが、実際のところはどうでしょう。「せわしない」は方言なのでしょうか?
1951年から版を重ねる『全国方言辞典』(東京堂出版)には、複数の地域の方言として「せわしない」が載っています。
【せわしない】 やかましい。うるさい。 青森・岩手・秋田・山形県村山・会津・石川。 (東條操 編『全国方言辞典』第59版、東京堂出版、1995年)
ところが、2004年刊行の『標準語引き 日本方言辞典』(小学館)には、方言ではなく標準語の側に「せわしない」が記載されているのです。
【せわしない】 あせない(富山県)。からせわしー(山形県東置賜郡)。 (佐藤亮一 監修『標準語引き 日本方言辞典』第1版、小学館、2004年)
つまり、「標準語の“せわしない”を方言で言うとこうなります」と示されているわけですね。
しかし、同じ監修・編集者による2010年刊行の『都道府県別 全国方言辞典』(三省堂)では、大阪府や山形県(内陸部)の方言として「せわしない」が記載されています。
【せわしない】(大阪の方言) 忙しい。
【せわしない】(山形県内陸部) うるさい。忙しい。 (佐藤亮一 編『都道府県別 全国方言辞典』第2刷、三省堂、2010年)
このように、方言についてはさまざまな研究者により調査が重ねられているものの、その変遷は複雑です。
総合的に判断すれば、
・北陸から東北で使われていた方言の「せわしない」が、いつしか標準語として市民権を得るようになった
・大阪や山形では方言の要素を持ちながらも今に至る
と考えられます。