現役SEが語る「最大の失敗」 (4/5ページ)
野村:私は今はマネジメントの仕事が中心で、エンジニアとしての仕事はあまりやっていないのですが、昔はプログラムを書いたり、システムのテストをしたりしていました。今回の小説の前半に、主人公の花が大失敗をする場面があるんですけど、あれは実は若い頃の私がやったことです(笑)。「もしかして、自分がやってしまったのでは?」と思い当たった時の背筋の凍るような感覚は忘れられないですね。
――そういう時、周りの人はフォローしてくれるんですか?
野村:なぐさめてはくれます。だけど、そんな声はほとんど耳に入ってきませんでしたね。お客様に謝りにいかないといけませんし、再発防止策も提出しないといけません。ミスの後処理がとにかく大変でした。作中の花もそうした処理に奔走しますが、あの場面は書きながら嫌な気持ちになりました(笑)。
――『HumanITy』はSEの仕事がわかる以上に、サスペンスとして面白かったです。大規模で注目度が高いプロジェクトの場合、成功を妨害するために、たとえば競合する企業などがスパイを送り込むということが、ひょっとしたら現実にもあるのかなと考えてしまいました。
藤田:スパイがプロジェクトを妨害するようなことはないと思います。ただ、案件を受注できるかどうかのところでは情報戦になるので、フェアなやり方で情報収集に努めることはありますね。
何億円、何十億円と動く案件だと、情報の多寡で受注できるかが左右されます。しかし、お客様からは私たちの技術に対しての評価、競合他社の価格、コンペの選定状況などは、ダイレクトには教えていただけません。ですので、できる限りのことをして断片的な情報を集めて、仮説推論を立てて、こちらの提案をブラッシュアップしていかないといけません。それでうまくいくこともありますし、逆に出し抜かれてしまうこともあります。
――最後に、みなさんから読者の方々にメッセージをお願いいたします。
藤田:サスペンスものですけど、仕事の現場としてのリアリティがあって、親近感を持って、自分のことのように没頭して読んでもらえるような内容になっていると思います。