赤レンガがバッテリーに!赤茶けた色を最新導電素材に転換する技術(米研究)
赤レンガが電池に image by:Washington University
セントルイス・ワシントン大学(アメリカ)の研究グループは、レンガを電池にしようとしている。ソーラーパネルにつなげば、普通のレンガが再生可能エネルギーに早変わりだ。
研究グループのジュリオ・M・ダーシー氏によると、レンガは多孔質構造をしており、電気をためるにはぴったりなのだそうだ。孔はレンガの表面積を広げるので、それだけスーパーキャパシタ素材がたくさんの電気を蓄えることができる。
「三匹の子ぶた」の話ではレンガで家を建てた3番目の子ぶたが狼を追い払うことができたが、さらにそこにバッテリー機能が加わるというのだから快適だ。
・レンガの色を最新導電素材に
レンガが赤茶けているのは、その粘土に「酸化鉄」が含まれているからだ。
そこで研究グループは、孔に酸化鉄を分解する酸蒸気を流し込み、反応型の鉄に変換。そこへさらに鉄と反応する硫黄ベースの素材を満たすことで、孔の表面を「PEDOT」という導電性プラスチックでコーティングすることに成功した。
こうしてできたPEDOTコーティングは、菌類の繊細なフィラメントのようなナノファイバーでおおわれている。ナノファイバーは電気抵抗が低く、かつ広い面積を持っているために、電気を蓄えるにはぴったりの構造をしているという。
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・13分の充電で非常用照明を50分点灯
PEDOTコーティングのレンガは、ほんの数個あればLEDを1つ灯すことができる。
また一般的なサイズのものが60個もあれば、13分間の充電で、非常用照明を50分間点灯させられるだけの電力が得られるという。
さらに1万回も繰り返し充電できることも優れたところだ。
image by:Washington University
・ありふれたサビから再生可能エネルギー
PEDOTコーティング・レンガを作るためのポイントは酸化鉄だが、これは要するにサビのことだ。どこにでもあり、しかも普通は厄介者扱いされるサビを役に立つ素材に変えられるところが、じつは今回の研究の本当にスゴいところなのだ
サビた鉄は一般的な廃棄物だが、これを再利用して最新の導電素材を作り出すことができれば、使われなくなった建材などにもまた新たな使い道が生まれることだろう。
現在、研究グループは、ナノファイバー構造を別の半導体を組み込んだ複合素材に変えようと試みている。こうすることで、レンガの蓄電容量を大幅にアップさせるのだ。
最終的な目標は、レゴのように簡単に組み立てられるデバイスを開発することだそうだ。
この研究は『Nature Communications』(8月11日付)に掲載された。
Energy storing bricks for stationary PEDOT supercapacitors | Nature CommunicationsReferences:Washington University in St. Louis/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17708-1