トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)

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トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)
トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)

image by:Killer Tomatoes Strike Back!

 植物は動物のように自ら移動することはできないが、その分様々な知恵と工夫で情報伝達を行っている。

 これまでの研究から、植物は仲間同士コミュニケーションをとっていることが明らかとなっているが、新たな研究によると、トマトは菌根菌(きんこんきん)を媒介して仲間に合図を送っていることがわかったという。

 この菌はトマトにとってのスマホのようなもので、これで仲間とコミュニケーションをとっていたのだ。すごいぞトマト。
・トマトが発する電気信号を数学モデルと物理実験で分析

 今回の研究を率いたアメリカ・アラバマ大学ハンツヴィル校のユーリ・シュテッセル博士の専門は制御工学である。制御アルゴリズムは、航空宇宙分野などで幅広く活用されている。

 一方、オークウッド大学、生化学者のボルコフ博士は、植物および植物間における電気信号の伝わり方に関する研究を行っていた。

 2017年、このふたりは初めてタグを組み、物理実験と数学モデルを使って、トマト間の電気信号の伝達を研究した。

「ボルコフ博士は、生化学分野の第一人者です。以前、茎を通した場合と土壌を通した場合の、植物間の電気信号の伝播について、ふたりで議論したことがあります」シュテッセル博士は語る。「そして、同等の電気回路とそれに対応する数学モデルを作って、このプロセスを再現してみようと提案しました」

 数学モデルは、常微分方程式と偏微分方程式に基づいて作られ、シュテッセル博士がシミュレーションを行い、プロットを作成した。

 「コミュニケーションプロセスの数学モデルを使う利点は、実際の植物を使った実験よりも費用や時間を大幅に削減できるというコスト面です」

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image by:Return of the Killer Tomatoes

・トマトは菌根菌を媒介して仲間に信号を送っていた

 植物は電気信号を発して、自分の体を通してそれを伝播していることがわかっている。

 そこでトマトの根を互いに離して別々の土壌に植えてみたところ、トマト間の電気インピーダンス(電流の流れを妨げるもの)がかなり大きくなり、電気信号が伝わらなかった。

「電気信号は伝わらず、根を通しての植物間のコミュニーケーションが妨げられました」

 しかし、植物を同じ土壌に植えると、インピーダンスがそれほど大きくなくなり、植物のコミュニケートが可能になることがわかった。

 この電気信号の媒介をしていたのが、土壌のいたるところに存在している菌根菌(菌根を作って植物と共生する菌類)のネットワークだったのだ。

 菌根菌とは、植物と共生する菌類で、地中にはりめぐらした菌糸を植物の根につけて菌根をつくる。この菌根菌が電子回路のような働きをして、電気信号が交換される。

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image by:neogaf

・菌を媒介すれば異種植物のコミュニケーションも可能に

 このトマトの実験からは、同種間でのコミュニケートは確認できた。だが、菌根菌網を介せば、同種だけでなく、異種間でも互いに電気信号を送ることができる可能性はありうるという。

 この電気信号のやりとりで、どのようなメッセージが送られているのかはわからないが、受け取った電気信号を認知している可能性は、この実験の見通しの想定を超えていた。

 「やりとりされ、植物が受けとった電気信号の認知プロセスの研究は、まだ未完です。また、植物間のこうした電気信号のやりとりは、空気中でも可能なのかという疑問もあり、さらに掘り下げて研究していく必要があります」

この研究は『Communicative&Integrative Biology』(2020年5月)に掲載された。
Full article: Underground electrotonic signal transmission between plants
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19420889.2020.1757207
References:phys/ written by konohazuku / edited by parumo
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