地球の200倍。月面の宇宙放射線量を史上初めて正確に計測(ドイツ・中国研究)

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地球の200倍。月面の宇宙放射線量を史上初めて正確に計測(ドイツ・中国研究)
地球の200倍。月面の宇宙放射線量を史上初めて正確に計測(ドイツ・中国研究)

月面の放射線量を初計測/iStock

 地球に一番近い星、月。かつて人類はそこに到達し、NASAは、今後10年以内に再び人類を月へと送る「アルテミス計画」を進めている。だが、月は静かな世界に見えて、生身の人間にはそれなりに過酷な場所だ。

 大気も磁場もない月では、大量の宇宙放射線が降り注いでおり、人間の健康に長期にわたり様々な影響を及ぼす。

 いったい月面の放射線量はどれほどのものなのか?このほど月面の放射線が計測され、その結果、地球の200倍に及ぶことが判明したそうだ。
・月面の放射線レベルを正確に計測

 次に人類が月面に降り立つのは2024年になるだろう。NASAは今、そのための「アルテミス計画」を着々と進めている。

 しかし月面に滞在する宇宙飛行士は、深刻な健康リスクに直面する。大気も磁場もない月では、宇宙から大量の放射線が降り注いでくるからだ。

 意外にも、これまで月面の放射線レベルが正確に計測されたことはなかった。

 1960年代と70年代に実施されたアポロ計画では、宇宙船に線量計も搭載されていたのだが、それによって計測されたのは宇宙旅行全体で暴露した総線量だった。そのために具体的にどのくらいの放射線が月面に降り注いでいるのかは、推測するよりなかったのだ。

 だが今回、2019年に月の裏側に着陸した中国の「嫦娥4号」によって、月面の放射線レベルが史上初めて正確に計測された。

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iStock

・地球の200倍、国際宇宙ステーションの2.6倍

 中国科学院や独キール大学をはじめとするグループが『Science Advances』(9月25日付)で発表した報告によると、月面の放射線は毎時60マイクロシーベルトだった。実に地球の200倍である。

 すごい線量に思えるが、必ずしもそういうわけでもないようだ。1日あたりの暴露量だと平均1369マイクロシーベルトになるが、これは国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が日々暴露している量のおよそ2.6倍だ。

 またニューヨークからフランクフルトまで飛行機で移動したときに乗客が暴露する量の5~10倍である。

 確かに地球表面の基準で見ればかなりの高さかもしれないが、宇宙基準ではそれほどでもなさそうだ。NASAはがんで死ぬリスクが3%以上上昇するような暴露を禁じているが、月面の放射線レベルはそれより低いとのことだ。

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Pixabay

・そのままなら2か月、対策が施された月面基地なら6か月滞在可能

 こうした正確なデータは、今後行われる月面ミッションで宇宙飛行士を守る対策を練るうえで大いに役に立つ。

 もし何の対策もしなかった場合、月面に滞在できるのは2か月が限度となるが、保護施設を建設することで被爆から身を守ることができる。

 たとえば月面基地を50センチの地下に作れば、そこにいる人間を守ることができるという。ときおり荒れ狂う太陽嵐は放射線を一気に増加させるが、それも10メートルの水の層があれば十分であるそうだ。

 監視衛星に搭載された最新の機器ならば、そうした放射線が月面に到達する30分前に警報を出すことができる。したがって、宇宙飛行士は30分以内に避難できる保護施設を常に確保しておく必要があるということになる。

 こうした放射線対策が施された月面基地ならば、6か月はNASAの安全基準を上回ることなく滞在できると、米ネバダ大学のフランシス・クチノッタ氏は第三者の立場で解説している。

First measurements of the radiation dose on the lunar surface | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/39/eaaz1334
References:sciencemag / inverse/ written by hiroching / edited by parumo
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