元七冠・羽生善治“レジェンド復活”を支えたAI研究と体幹トレーニング (2/3ページ)
バイオリズム的に調子が芳しくないと思う時期はありますから‥‥」(森内九段)
実力伯仲のトップ棋士同士の対局は、さながら勝敗が目まぐるしく入れ代わる。7月13日の対局で羽生に勝利した屋敷伸之九段も、
「勝利したのはたまたまです(笑)。勝敗は対局時の調子や運に左右される部分もありますから」
と、あくまで「勝負は時の運」とばかりに謙遜するが、羽生の勝負への飽くなきこだわりは、ついに17年度、前人未到の「永世七冠」として結実することとなった。
ところが、翌18年には竜王戦で広瀬章人八段(33)に敗れて27年ぶりの無冠に。しばらくタイトル戦から遠ざかる憂き目を見たが、今回の藤井からの勝利で、タイトル戦線へ堂々たる復帰を果たしたのだ。
先立つ9月19日には「第33期竜王戦挑戦者決定戦」三番勝負の三局目で丸山忠久九段(50)を下し、2年ぶりのタイトル挑戦権を獲得、快進撃の波に乗り始めた最中だった。
「気持ちが非常にノッているように感じました。予選のランキング戦で優勝して勢いもありました。通算100期をかけたチャンスに気合いが入っているのではないでしょうか」(森内九段)
往年の将棋ファンは羽生の完全復活を心待ちにしていたことだろう。
かつては、対局を重視し唯我独尊の独学で研鑽を重ねてきた羽生だったが、通算100期目のタイトルも視野に入った好調ぶりの背景には、独自のAI研究が実を結んだと評されている。観戦記者が明かす。
「AI研究に熱心な豊島将之二冠(30)や藤井二冠の棋譜を見て研究しているそうです。どの棋士も大なり小なりAIソフトを活用して局面ごとの評価値を割り出し、効率よく将棋の勉強に取り組んでいます。その第一線をいく二人の棋譜ともなれば、濃縮還元して吸収されたも同然ですからね」
いわば最先端の棋譜を研究しつつ、自分のものにしてきたことが大きいというのだ。これもまた、いいものは何でも取り込むという合理性を重んじる羽生ならではのAI研究法だ。
そんな羽生でも、寄る年波には逆らえない一面が見え隠れしている。
「昨年、歩行困難になるまでに悪化した、かかとの負傷がクローズアップされました。