イラストや写真が多い読み物は、子供の文章の理解力を低下させる(米研究)

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イラストや写真が多い読み物は、子供の文章の理解力を低下させる(米研究)
イラストや写真が多い読み物は、子供の文章の理解力を低下させる(米研究)


 文章を読む力(読解力)は、生きていくうえで必要なスキルである。勉強や仕事、日々の暮らしの中でそれがないと面倒なことになる。ところが、アメリカでは3分の1の小学生が、その学年に期待される読解力の水準に達していないという。

 そこでカーネギー・メロン大学の研究グループは、教材のデザインが読解力の発達にどのように影響しているのか調べてみることにした。

 すると、イラストや写真をふんだんに使った本は一見楽しげで、子供が読書に集中してくれそうに思えるが、実際には彼らの注意を文章から逸らしてしまい、かえって内容を理解しにくくさせてしまうことが判明したそうだ。
・イラストが文章の邪魔をする?

 本を読み始めたばかりの子供向けの本は、物語のイメージを膨らませ、子供の関心を本に引き付けるために、可愛らしいイラストが盛りだくさんだ。

 しかし子供の効率的な読書教育を研究するアナ・フィッシャー氏とカサンドラ・エング氏らは、そうしたイラストが子供の気を散らしてしまい、肝心の内容を把握できないよう邪魔しているのではないかと疑念を抱いていた。

 そこで小学1、2年生の児童60名にその年齢向けに市販されている本を読んでもらうという実験を行った。

 彼らにオリジナルの本と無関係なイラストを削ってすっきりさせた本のどちらかを読んでもらい、内容の理解に差が出るかどうか比べてみるのだ。

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子供たちに読ませた本の一例 image by:Carnegie Mellon University

 本のデザインの見直しは大人の参加者が行った。彼らにイラストを見てもらい、内容と関係があると90%の人が同意したもの以外は、無関係なイラストとして削除された。

 また本を読む際は子供にアイトラッカーを装着してもらい、彼らの読書中の視線の動きを観察できるようにした。


・過剰なイラストが子供の文章理解力を妨げていた

 その結果、どの子供も1ページを読むのにかかる時間はそれほど変わらなかったが、デザインを変更した本を読んだ子供の場合、視線が文章から離れることが少なく、内容の理解度スコアも高い傾向にあることが判明したそうだ。

 特に事前の調査で、文章から視線が離れがちな子供ほど、デザインの変更による効果が高いことも分かったという。

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ストーリーに無関係なイラストのレベル image by:Carnegie Mellon University

 おりしもコロナ禍により、子供たちの教育は教師が直接指導するものから、ITツールなどを利用したリモートワークスタイルに変化しつつある。しかしこれを逆にチャンスと考えようと研究者はポジティブに思っているようだ。

 「これは素晴らしいことです。学習理論に基づいて、子供にとってもっと有益な体験になるような教材をデザインできるからです」と、エング氏は話す。

 学校に思うように通えないという状況が、学習の効率をアップさせるチャンスに変わったのだ。

 コロナは我々のライフスタイルを大きく変えた。だがそれにより、改善点が見つかったり、効率化が促進されたりすることもある。そういった意味では悪いことばかりではないのかもしれない。

 この研究は『npj Science of Learning』(9月28日付)に掲載された。
References:Busy pictures hinder reading ability in children/ written by hiroching / edited by parumo
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