もうすぐ月で携帯電話の利用が可能に。NASAとノキアが月面に4Gネットワーク構築計画を発表(NASA)

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もうすぐ月で携帯電話の利用が可能に。NASAとノキアが月面に4Gネットワーク構築計画を発表(NASA)
もうすぐ月で携帯電話の利用が可能に。NASAとノキアが月面に4Gネットワーク構築計画を発表(NASA)

月でスマホが使える未来がすぐそこに / Pixabay

 NASAが主導する、月への有人宇宙飛行計画を目的とした国際的なプロジェクト「アルテミス計画」は、日本も参加することが決定しており、日本人宇宙飛行士の募集が始まるそうだが、順調に進めば、2024年に人類は再び月面に降り立つことになるだろう。

 もしかしたらその時、日本人初の宇宙飛行士が月からTwitterでつぶやいてくれるかもしれない。

 このほど、ノキア(NOKIA)と提携し、月面に4G/LTEネットワークを構築するとNASAから発表があったのだ。
・宇宙に通信ネットワークを構築

 NASAによれば、ネットワーク設備が2022年後半に設置され、基地局の範囲内で高速通信が可能になるとのこと。契約額は1410万ドル(約15億円)であるそうだ。

 ノキアによれば、設備は超コンパクトで、消費電力が少なく、宇宙の環境にも耐えられるものであるとのこと。またその設置は、米企業インテュイティブ・マシーンズが開発した跳躍式の小型ランダーをリモートで操作しながら行われることになるようだ。

 宇宙に通信ネットワークを広げようという試みは月だけではない。たとえばスペースXの設立者イーロン・マスク氏は、同社の衛星ネットワーク「スターリンク」を火星に構築する可能性について言及している。


Elon Musk announces Starlink to Mars, Starship's stratospheric flight and Moonship in 13 minutes

・宇宙通信ネットワークの難しさ

 しかし、こうした宇宙ネットワークを構築するためには、宇宙の広大さという大きな壁が立ちはだかってくると、Popular Scienceは解説している。

 たとえば、誰かが東京でツイートしたとしよう。それがニューヨークに伝わるまでには0.2秒もかからない。

 だが、自然界で実現できる最高速度、すなわち光速で移動するレーザーを使ったとしても、月に到達するまでには1秒以上かかる。それが火星なら片道3分から20分だ。

 くわえて、宇宙船や惑星がとんでもない速度で宇宙空間を移動していることを考えれば、それらを通信ネットワークでつなぐということがどれだけ難しいか想像できるだろう。

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・宇宙でメッセージの喪失をどうやって防ぐか?

 宇宙は広大すぎて、光速であって各領域が孤立してしまう。通信機器の世代が何Gに進化しようとも、地球と火星とでリアルタイムのスムーズな交信はできない。

 そこで宇宙の通信はそれぞれの領域ごとにローカルネットワークを構築し、それらをさらに領域間ネットワークでつなぐというやり方になるかもしれない。

 しかしこれもそう簡単な話ではない。地球でデータ通信を行う際には「伝送制御プロトコル(TCP)」と「インターネット・プロトコル(IP)」という仕組みが利用されている。

 東京のツイートはまず東京のサーバーに保存され、ニューヨークの受信者はそこからツイートを受け取ることになる。TCP/IPの仕組みでは、まず送受信が行われるデバイスに、世界中のサーバーをいくつも経由して、デバイス間のルートを探し出してもらわなければならない。

 ルートが確立された時点でメッセージが送信されるのだが、万が一、メッセージを送信している最中につながり合ったルートチェーン上のリンク(ノード)の1つに不具合が起きれば、ルートは途絶し、メッセージは消えてしまう。

 とはいっても、比較的狭く、安定した地球上ではこうしたことは滅多に起きない。が、ずっと広大な宇宙となると話は別で、そうした問題がもっと頻繁に起きることになる。

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・宇宙の広大さを克服するネットワーク

 これを解決する1つの方法として、末端のデバイスだけでなく、各ノードすべてに責任を負わせるやり方がある。これを「遅延耐性ネットワーク(DTN)」という。

 DTNではデータが送信されるはずの次のノードに不具合が起きていた場合、ひとまず中間ノードにデータが保存され、ルートが回復するのを待つ。

 次のノードに確実に伝えられたことが確認されるまで、ノードが保持するデータが消去されることはないので、途中でメッセージが消失してしまうようなことはない。

 DTNを使ったからといって、地球と火星の通信がスムーズになるわけではないが、少なくともメッセージは確実に伝わる。

 NASAはすでにDTNの実験を行なっており、たとえば2008年の最初のミッションでは地球から探査機ディープ・インパクトへ送信された300枚の画像データが、2400万キロを経て再び地球で受信された。

 さらにあの国際宇宙ステーションも2016年にDTNのためのノードとして利用されている。

 なお、今回ノキアが設置しようとしているLTEネットワーク上の機器は、従来のTCP/IPが利用されるとのことだ。

References:popsci/ written by hiroching / edited by parumo
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