日本は太陽=女性の国…神話の時代より男性を奮い立たせてきた「妹の力」とは

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日本は太陽=女性の国…神話の時代より男性を奮い立たせてきた「妹の力」とは

「元始、女性は太陽であった」とは女性解放運動家の平塚らいてう(ひらつか―。明治十九1886年~昭和四十六1971年)が発した言葉ですが、多くの男性にとって女性とは憧れであり、活力の源となってきたことから、太陽という表現は実に言い得て妙です。

そんな心情は今も昔も変わらなかったようで、古くから女性の存在が男性に力を与え、多くの事業を成さしめて来ました。

(女性の前だと、特にいいカッコしたくなって、不思議とやる気が湧いてくる、あの感覚は諸兄も身に覚えがあるかと思います)

柳田國男。Wikipediaより。

このある種の霊力とも言える概念について、民俗学者の柳田國男(やなぎだ くにお)は「妹(いも)の力」と名づけて発表。多くの日本人が共感したことでしょう。

そこで今回は、この「妹の力」について紹介したいと思います。

女性に秘められた太陽の力

妹(いも)と言っても、ここで言うのは家族としての妹に限定されず、妻や恋人など「特別な女性」を意味します(もし妹が特別な女性であれば、もちろん含まれます)。

その事例は多く、古くはスサノオ(須佐之男命)を守護してヤマタノオロチ(八俣遠呂智)退治を助けたクシナダヒメ(櫛名田比売)や、ヤマトタケル(倭建命)に草薙剣を与えて東征の武運を加護したヤマトヒメ(倭比売)など、ここ一番で力を発揮しました。

クシナダヒメの加護を得て、ヤマタノオロチを退治するスサノオ。日本神話『古事記』ハイライトの一つ。

その後も男性が実務(≒政治権力)を司り、女性が祭祀(≒神からの権威)を司ることで補完するヒメヒコ制がとられ、女王・卑弥呼(ひみこ)が統治し、弟が補佐したことで知られる邪馬台(やまたい、やまと)国をはじめ、多くの事例が見られます。

その後も男性的な武家が握った権力に、女性的な朝廷が権威を与えることで補完される政治体制が江戸時代(※)まで続くことになりますが、これはヒメヒコ制が形を変えたものと言えるでしょう。

(※)明治時代以降も天皇陛下(皇室=朝廷)の権威によって日本政府の権力に正当性が与えられている点は同じです。

一方、民間レベルでも「女性にまつわるものを身に付けると霊験がある」という信仰は根強く、例えば博奕などの勝負に際して女性の髪や小物などをお守りに持って行くとか、あるいは弾除けになると信じられた千人針(せんにんばり※)もその一種と言えます。

(※)手拭いに赤い糸玉を一人一針ずつ縫い付けたお守り。より多くの女性が手掛けることで霊力が増すと信じられ、近代において出征を控えた兵士の親族が街頭に立って、女性たちの協力を求める光景が見られました。

「女性とは、男性を加護する霊力が秘められた特別な存在である」

時代と共に中華大陸的な男尊女卑思想が普及していっても、日本人男性の根本精神には女性を太陽として崇敬する思想(※)が受け継がれ、ここ一番の大仕事に加護を得ています。

天岩戸が開かれ、太陽(天照御大神)が甦った。Wikipediaより。

(※)日本神話における最高神は、太陽の女神であるアマテラスオオミカミ(天照大御神)です。

日本は「ひの(照らす)もと」という名が示す通り「太陽の国」であり、太陽である女性の加護を受けた男性が力を奮って共に助け合い、いつまでも幸(さきわ)い続けることを願っています。

※参考文献:
柳田国男『妹の力』角川ソフィア文庫、2013年7月
『日本国語大辞典』小学館、1973年3月
倉野憲司 校注『古事記』岩波文庫、1963年1月

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