『鬼滅の刃』と『進撃の巨人』2大傑作「3つの共通項」と相反する魅力!

日刊大衆

『鬼滅の刃』(集英社)
『鬼滅の刃』(集英社)

 どこもかしこも鬼滅、きめつ、キメツ……『鬼滅の刃』ブームが止まらない。映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は公開から24日間で、興行収入が204億円に到達。歴代興行収入ランキングトップ5に入り、歴代1位『千と千尋の神隠し』の308億円超えも現実味を帯びてきた。

 今年5月まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)氏による原作コミックの累計発行部数も、10月2日発売の第22巻で1億部(電子版含む)を突破。12月4日発売予定の第23巻をもって物語は完結を迎えるが、昨今のブームの影響で発行部数はさらに上積みされそうだ。

 一方、数年前に“進撃ブーム”を巻き起こしたのが、『週刊少年マガジン』(講談社)で連載中の諫山創(いさやまはじめ)氏による『進撃の巨人』だ。その人気はいまだ衰えず、連載開始から約10年、2019年12月9日発売の第30巻をもって1億部(電子版含む)を突破。その複雑かつ緻密、そして現実にも通じる残酷な世界観は世界中のファンを魅了し、講談社の漫画としては『金田一少年の事件簿』に続く2作目の“1億部超え”という金字塔を打ち立てた。

 この漫画史に残るであろう2つの傑作には、共通項が多い。両作とも作者の“連載デビュー作”であることや、WIT STUDIO(=進撃)、ufotable(=鬼滅)といった世界に誇れる日本のアニメ制作会社が手がけたハイクオリティな“アニメ化”がブームのきっかけとなったことなど、アウトライン的な部分にも共通する点は多いが、ここでは物語の構造のみに焦点を絞って3つの要素を挙げてみたい。(ここからは一部内容のネタバレを含みます。)

■『鬼滅の刃』と『進撃の巨人』大ヒットアニメの3つの共通点とは?

 まず1つ目の共通点は、「復讐心からスタートする物語」ということだ。

 鬼滅の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)は、鬼に家族を惨殺され、唯一生き残ったものの鬼となってしまった妹・禰豆子を人間に戻すため、鬼たちとの戦いに身を投じていく。もちろん炭治郎には、妹や鬼に苦しめられている人々を助けたいという純粋な善意もあるのだが、家族をバラバラに引き裂いた最強最悪の敵・鬼舞辻無惨に対する復讐心も、自身を奮い立たせる原動力の1つとなっていることは間違いない。

 一方、進撃の主人公エレン・イェーガーも、ある日突然あらわれた巨人に、目の前で理不尽に母親を食い殺されている。この体験を契機に、エレンには“この世から巨人を一匹残らず駆逐する”という強大なモチベーションが生まれ、物語が展開していくことになる。古今東西さまざまな復讐物語が紡がれてきたように、“仇討ち”というテーマは、どこか人々の心をくすぐる魅力を秘めているのかもしれない。

 2つ目の共通点は、「根底に流れる身分格差と弱肉強食論」である。

 日本の大正時代を舞台とする鬼滅は、背景に当時の人々の貧困や過酷な児童労働の実態などがかいま見える。また、恐らくこれからアニメ化されるであろうが、遊郭の最下層で生まれた十二鬼月の上弦の陸、堕姫・妓夫太郎の兄妹パートなどは、作品の根底を流れるこれらのテーマが顕著にあらわれている。

 さらに、強くなければ出世ができないどころか、頂点に君臨する絶対権力者に少しでも逆らえば“死”が訪れるという十二鬼月という組織自体も、現代に置きかえれば究極のブラック企業であり、身分格差の最たるものといえよう。

 一方、進撃の世界はもっとわかりやすい格差社会だ。中央権力に近いほど安寧が保障され、最も壁に近い外側に住むのは、貧しくて巨人の“おとり”にされる人々。そして、圧倒的な力を持つ巨人を前に、弱き者、判断力に劣る者、運の悪い者…たとえ読者からどんなに愛されたキャラクターだとしても、容赦なくバタバタと死んでいく。ヒロイン・ミカサを覚醒させた“勝てなきゃ…死ぬ…勝てば生きる…戦わなければ勝てない…”というエレンの有名な台詞があるが、これはまさに弱肉強食論そのものだ。

■3つ目の共通点......そして2作品の決定的な違いとは?

 3つ目の共通点は、「人間対人間の構図」である。

 鬼も巨人も、神がつくりたもうた無為自然の存在などではなく、もとは人間。人を食らわなければ生きられない鬼や巨人にも、かつて人間だった時代があり、(一部生まれながらのサイコパスキャラは除き)それぞれ強者に組み敷かれてきた事情や、天を恨みたくなるような悲しいバックグラウンドが存在する。物語のスタート時は単なる“悪者”として描かれる鬼や巨人だが、物語が進むにつれ世界が反転し、「人間対人間」の構図へと徐々に変化していく。正義とは、善悪とは一体何なのか。そんな問いを読者に突きつけてくるところも、両作に共通している。

 一方、双方における決定的な違いでもあり、最大の魅力ともいえるのは、主人公のキャラクターではないだろうか。前述したように、同じ人間だからこそ、炭次郎は死にゆく鬼を悼み、情けをかける。涙を流す。同じ温度で、見知らぬ人々にまで手を差し伸べる。一方エレンは、同じ人間だからこそ、醜い争いは永遠に終わらないという事実を悟り、心底絶望する。大切な人以外、全てを消し去ろうとする。

 ヒーローとダークヒーローのように対をなす2人。彼らの矜持や突き進む道は、まるで正反対だ。しかし、だからこそ我々は、彼らがたどり着くゴールを最後まで見届けたくなる。

■『鬼滅の刃』に続き、『進撃の巨人』も完結迫る

 『鬼滅の刃』に続き、『進撃の巨人』も近いうちに終幕を迎えると言われている。一体どんな結末が訪れるのか――漫画史に残る2大傑作を同時代に味わえる幸せをかみしめながら、その日を待ちたい。

『進撃の巨人』(講談社)

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