自然災害は万人を平等に飲み込んだ。ポンペイ遺跡で新たに発見された主人と奴隷の遺体(ヴェスビオ火山噴火)

ポンペイ遺跡で発見された主人と奴隷の遺体 Luigi Spina / Pompeii Archaeological Park
かつてイタリア、ナポリ近郊に存在した古代都市「ポンペイ」。栄華を誇ったこの街は、79年にヴェスビオ山が噴火したことで一瞬にして火山灰に埋れてしまったことで知られている。
そんな栄光の儚さを今に伝えるポンペイ遺跡で、新たな犠牲者が2人発見されたそうだ。その遺体は主人と奴隷と思われるもので、万人に平等に破滅が訪れたことを今に伝えている。
L'impronta del dolore: le vittime di Civita Giuliana – Gli ultimi calchi di Pompei
・逃げる途中で倒れたらしき2人の犠牲者
発掘が行われたのはポンペイ遺跡から700メートル北西にある「チビタ・ジュリアーナ(Civita Giuliana)」。この村のナポリ湾を見下ろすように建てられた邸宅の地下室で見つかった。
部屋が面していた抜け道は上の階へと続いており、どうやら2人は逃げようとしていたようだ。発掘チームの見解では、火砕流が上階の床を破壊し、2人はそれに飲み込まれてしまったらしいとのことだ。

image by:Luigi Spina / Pompeii Archaeological Park
・主人と奴隷である可能性
遺体は18~23歳の男性と30~40歳の男性のものだ。
若い方の男性は背骨に圧力を受けた痕跡があり、かなりの重労働をこなしていたらしいことがうかがえるとのこと。身につけていた衣服が簡素な作りだったことも併せて考えると、この人物は奴隷だったと推測されている。
一方、年長の男性の衣服は、肩に毛織りのマントをかけているなど、ずっと凝った作りで、奴隷の主人だったと考えられている。
「死因は高熱によるショック死です。足や手にギュッと力が込められていることからも分かります」と、ポンペイ考古学公園のマッシモ・オサンナ氏は説明する。

image by:Luigi Spina / Pompeii Archaeological Park
・非業の死を遂げたそのままの姿を石膏を流し込んで再現
なお写真に写っている犠牲者の姿は、火山灰の空洞に石膏を流し込んで死亡時の姿をそのまま再現したものだ。
火山灰に生き埋めになった犠牲者の遺体はやがて腐敗して、骨と空洞だけが残される。そこに石膏を流し込んで固めれば、彼らが死んだときの姿そのままの石膏像が出来上がる。
彼らが非業の死を遂げる様子を目にすれば、心を揺り動かされずにはいられないだろう。
References:pompeiisites/ written by hiroching / edited by parumo