世界初、常温でダイヤモンドを生成することに成功(オーストラリア研究)

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世界初、常温でダイヤモンドを生成することに成功(オーストラリア研究)
世界初、常温でダイヤモンドを生成することに成功(オーストラリア研究)

常温でダイヤモンドを生成/iStock

 ダイヤモンドの永遠の輝きは、地球の奥深くに眠る炭素が、巨大な圧力と1000度を超える熱を受けながら数十億年という時間をかけて結晶化することで生まれる。

 だが地上では、科学者が悠久の時間を無視して、実験室でわずか数分、しかも常温でとても希少な輝きを作ることに成功してしまったようだ。

 こうして作られたダイヤモンドはその性質を活かして、どんな硬いものでも切断するツールや絶対に傷がつかない保護コーティングなどに利用できるという。
・史上初、常温で生成したダイヤモンド「ロンズデーライト」

 この快挙を成し遂げたのは、オーストラリア国立大学とRMIT大学の研究グループだ。

 同グループは、「ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)」という高圧をくわえられる装置を利用し、バレエのトウシューズの爪先ほどの範囲にアフリカゾウ640頭分に匹敵する圧力をかけ、そこにさらに一捻りをくわえた。

 「秘密は圧力のかけ方にあります」と、オーストラリア国立大学のジョディ・ブラッドビー教授は語る。

 同教授によると、圧力をかけると同時に、スライドするような「せん断」という力をくわえたのだという。こうすることで炭素原子がまとまって、史上初めて常温でダイヤモンドや「ロンズデーライト」を生成することに成功した。

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常温でのダイヤ生成の秘密は、物質をスライドさせるように作用する「せん断」
image credit:Sharayanan/Wikimedia Common

・ロンズデーライトは天然のダイヤより硬い

 ほんの数分のうちに常温で作られたといっても、ロンズデーライトは希少なものだ。

 隕石の落下地点などで発見されるそれは、「六方晶ダイヤモンド」とも呼ばれるとおり、六方晶結晶構造の炭素同位体だ。天然の物質でもっとも硬いとされるダイヤよりも58%硬い(なお、名称は結晶学者キャスリーン・ロンズデールに由来)。

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同じ炭素原子でも立方晶構造のダイヤ(左)と六方晶構造のロンズデーライト(右)では並び方が違う

 隕石に含まれるダイヤモンドは「地球外ダイヤモンド」と呼ばれているが、その研究から形成には高温と圧力のほかに、せん断が重要な要素であることが知られていた。

 こうして誕生したダイヤは、まるでロンズデーライトの間を流れる川のようだ。

 「写真は、私たち学際的チームによって開発された新手法によって、ロンズデーライトに挟まれるように形成されたダイヤモンドを映したものです」と説明するRMIT大学のドゥーガル・マカロック教授は、その様子を"川"にたとえる。

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ロンズデーライトに挟まれるように形成されたダイヤモンド。研究グループはその様子を”川”に例える
image credit:RMIT

 彼らは、この方法ならば、産業利用にも十分な量の人工ダイヤモンドを生産できるのではと期待する。ダイヤよりさらに硬い物質で作られた刃は、どんな硬い物質でも切り裂く最強の切断ツールだろう。

 この研究は『Small』(11月4日付)に掲載された。

References:Scientists defy nature to make insta-bling at room temperature - RMIT University/ written by hiroching / edited by parumo
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