秋元真夏、桜井玲香、中田花奈、若月佑美の「告白の順番」にある記憶の表現【乃木坂46「個人PVという実験場」第14回4/4】 (3/3ページ)
『告白の順番』MVに特徴的なのは、メンバーが持つハンディカメラに収録されたカジュアルなカットや、その映像をプロジェクターで大きく投影してパフォーマンスの背景に用いるなど、映像の粗さやアスペクト比等も複数の水準にまたがりながら展開される、「記憶」の表現である。
かつての記憶をたどりながら最後の公演に向かう物語はもちろん、乃木坂46在籍中最後のMV出演となった若月に充てられている。
MV中では人生の分岐にあたって創作表現を手放そうとする登場人物たちだが、それらキャラクターを演じた同楽曲の歌唱メンバーは、それぞれにソロの演者として、あるいはグループを率いる立場として、エンターテインメントの世界でキャリアを重ねている。
現実世界の彼女たちの歩みは、ドラマ内の人物たちが選ばなかった道の続きを見せてくれるものでもある。
■「ゆっくりと咲く花」で見せた新たな局面
また荒船は2020年、乃木坂46の2期メンバー楽曲『ゆっくりと咲く花』でも監督を務めている。本作では特殊な視覚効果とは対照的に、ワンカット映像をコンセプトに、ステージに立ち続ける演者としての2期生たちを捉えている。
https://www.youtube.com/watch?v=62QQy5NT61g
(※「ゆっくりと咲く花」MV ティザー映像)
舞台上をはじめとして劇場空間内を駆使したこのMVで浮かび上がるのもやはり、荒船の代表的なイメージであるスペクタクルではなく、メンバーの身体性やカメラワーク、照明などの連携による長回し映像の妙である。
落ち着いたトーンの中に張り詰めた緊張感をみせる本作は、乃木坂46×荒船泰廣のフィルモグラフィーにおける新たな局面を示している。
もっとも、このMVはラストシーンで明確にワンカットではない処理がなされる。しかし、それはここまでの一連の流れを断ち切るものではない。映像全体が冒頭に立ち戻り円環構造になることで、彼女たちの歩みはまだ見ぬ未来へと続いていく。