生駒里奈「浅草」若月佑美「若月浪漫」個人PVに見られる先行作品へのオマージュ【乃木坂46「個人PVという実験場」第15回1/5】

日刊大衆

※生駒里奈/画像はEXwebの記事(https://exweb.jp/articles/-/56269)より抜粋
※生駒里奈/画像はEXwebの記事(https://exweb.jp/articles/-/56269)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 1/5

■初期個人PVの中にある「パロディ」作品群

 乃木坂46の個人PVは、現在でこそ各クリエイターの自由な発想を投じるショートフィルムの実験場的な足場を定着させている。とはいえ、デビュー当初の模索期にあっては、「何からどう自由であるのか」という方向性もまだ不確かだったはずだ。

 2ndシングル『おいでシャンプー』と3rdシングル『走れ!Bicycle』に収録された個人PVにはそれぞれに、全作品を貫く統一テーマが設けられていたが、それもまた一定の方向づけを得るための枠組みだったはずだ。枠組みや縛りを持たない状態で、「自由」であろうとすることはとても困難である。

 それら初期個人PVの中には、さらに具体的な枠組みを踏襲した作品、すなわち実在のコンテンツを明確にパロディないしオマージュしたものを見つけることができる。その代表が、『走れ!Bicycle』収録の生駒里奈個人PVだった。

https://www.youtube.com/watch?v=0TBTB0NmFmQ
(※生駒里奈個人PV「浅草」予告編)

 一見して、テレビコンテンツとしてしばしば見られる街歩き番組を模した構成であることがわかるが、この作品はオープニングタイトルからテロップまで、シングルリリース当時テレビ朝日で実際に放送されていた加山雄三出演の『若大将のゆうゆう散歩』の形式を踏まえている。

 同個人PVを監督した勝木友香自身、『若大将~』に携わるスタッフであり、その意味では実在のテレビ番組を自覚的に借用したオマージュといえるだろう。

 もちろん、既存のコンテンツやジャンル、モチーフを用いて、ときにパロディ化しながら作り手が自身の表現へと昇華してゆくこと自体は少なくない。本連載で次週以降に扱うのもそうした作品群である。

 しかし、このように実在の先行コンテンツを直接的に背負い、形式までことごとく踏襲するタイプの企画は、のちの乃木坂46の個人PVにはみられなくなっていく。そうした点で、グループ初期の模索があらわれた一作だった。

■乃木坂46の作品をセルフオマージュ

 実在のテレビ番組の形式を直接背負った作品ながら、また違った趣をみせたのは5thシングル『君の名は希望』に収録された若月佑美の個人PVだった。この作品で踏まえられたのは、他ならぬ乃木坂46自身のテレビコンテンツである。

https://www.youtube.com/watch?v=sFg7qESMinY
(※若月佑美個人PV「若月浪漫」予告編)

 内村宏幸が監督を務めたこの個人PVは、乃木坂46のデビュー1年目に放送されていた『乃木坂浪漫』(テレビ東京)を明確になぞった作品である。

 日本文学の古典をメンバーが朗読し、メンバー主演のイメージカットと組み合わせて構成される『乃木坂浪漫』という番組は、それ自体がいくばくか個人PVの変奏のような性格を持っていた。

 それゆえ、若月主演による同作品は、自らが関わるテレビ番組への明確なセルフオマージュでありつつ、個人PV単体としてみても収まりのいいものになっている。

 また、個人PVとしての『若月浪漫』では、若月が朗読する文章も若月によってつづられた物語という体裁をとり、映像なかばでは彼女自身が手がけた絵が採用された。『乃木坂浪漫』にもまして、演者を絶対的な主役に据えるシフトがとられ、若月の才気を伝える場所としての機能も果たしている。

 他方、映像中のラストカットでは、演技パートにとある乃木坂46メンバーが出演していることも明かされ、この個人PVのアクセントになっている。

 もとより、個人PVに設定されている5分程度という尺の短さは、既存の映像コンテンツを軽やかにパロディ化してみせるうえで非常に相性が良い。

 乃木坂46が個人PVを自前の武器として確立していくにつれ、パロディやオマージュ、既知の鋳型を換骨奪胎するような秀作が多く生まれていくことになる。

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