お正月によく飲む「お屠蘇(とそ)」の由来は?薬っぽい味の中身も調べてみました
新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。令和3年(2021年)もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、お正月と言えばお節料理やお雑煮と一緒に、お屠蘇(とそ)を愉しむ方も多いかと思います。このお酒のような味醂のような飲み物は、いったい何なのでしょうか。
今回はそれを調べてみたので、紹介したいと思います。
病魔を屠り、魂を蘇らせるお酒まず、お屠蘇という名前については諸説あり、体内に棲みついた蘇(そ)という病魔を屠(ほふ)る≒殺すという意味や、体内の病魔を屠り、魂を蘇らせるという意味などが考えられています。
屠蘇散をはじめ、多くの医術の人々を救った名医・華佗。Wikipediaより。
お屠蘇の発祥は古代中国の後漢(ごかん)王朝時代に華佗(か だ)という名医が考案した「屠蘇散(とそさん)」とされ、日本へは平安時代初期、第52代・嵯峨天皇の時代に伝来したそうです。
そのレシピは時代や地域によって若干の違いがあり、現代では山椒(サンショウ)、細辛(ウスバサイシン)、防風(ボウフウ)、肉桂(シナモン)、乾姜(ショウガ)、白朮(オケラ)、桔梗(キキョウ)、陳皮(ミカン)などが多く用いられています。
これらの生薬を日本酒と味醂を合わせたもの(配分はお好みで)に一晩ほど漬け込めば完成。元旦に飲むことが多いため、大晦日の夜に仕込んでおくのが一般的です。
古来「一人これを飲めば一家苦しみなく、一家これを飲めば一里(※)病なし」と言われ、心身の邪気を祓い、健康長寿を願うために飲まれてきました。
(※)村里一つとも、一里(約4km)とも解釈できますが、いずれにせよ「ご近所じゅう」というニュアンスと思われます。
お屠蘇の飲み方お屠蘇を飲むときには家族全員が東を向き、年少者から順番に「一人これを飲めば一家苦しみなく、一家これを飲めば一里病なし」と唱えて三つの盃を飲み干しますが、略式では一つの盃に少しずつ3度注ぎ、3度に分けて飲み干します。
古式ゆかしい屠蘇器一式。Wikipediaより(写真:midorisyu氏)。
年少者から飲むのは、若々しい生気を年長者に受け渡す意味がありますが、地域や家庭によっては年長者の知恵を若者に授ける意味で年長者からお屠蘇を飲むこともあるため「郷に入っては郷に従え」でいきましょう。
お正月にお屠蘇を飲む習慣は、発祥の中国大陸では唐(とう。7~10世紀)王朝時代に始まって現代は廃れている一方、日本では平安時代から現代に至るまで続いています。
これが転じて、日本ではお正月の席で飲む酒のすべてをお屠蘇と呼ぶこともあり、酒は「百薬の長」だからとつい飲み過ぎる方も少なくありませんが、お酒は楽しく適量が一番。また、アルハラにも要注意です。
どうか今年も、皆様が心身共に健康で幸せでありますように。
※参考文献:
加藤友康ら編『年中行事大辞典』吉川弘文館、2009年2月
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan