宇宙の中心で象を数える。衛星カメラとディープラーニングを使用した画期的な個体数の調査法が開発される

カラパイア

宇宙の中心で象を数える。衛星カメラとディープラーニングを使用した画期的な個体数の調査法が開発される
宇宙の中心で象を数える。衛星カメラとディープラーニングを使用した画期的な個体数の調査法が開発される

宇宙から象を正確に数えることに成功/pixabay

 現在、野生のアフリカゾウは個体数が減少し、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでは絶滅危惧種の危急種に指定されている。

 種を救うためには、正確な個体数や生息場所の監視が必要だ。このほど英バース大学の研究者らは、本来人間が行うモニタリング法よりも容易にできる衛星カメラとディープラーニングを組み合わせた監視方法に初めて成功したことを発表した。『C Net』などが伝えている。
・宇宙から象を数える

 1月19日、英バース大学は衛星カメラとディープラーニング(多層の人工ニューラルネットワークによる機械学習手法)を組み合わせて、複雑な地理的景観の動物を数えることに成功し、絶滅危惧種の個体数を監視する上で保護活動家を重要な一歩に導いたことを発表した。

 研究チームは、衛星Worldview 3の高解像度の画像を使用して、森林や草地を移動するアフリカゾウを撮影。『MAXAR』によると、自動化されたこの新システムは、人間の検出能力に匹敵する精度を持っているという。

1_e9
image credit:Maxar Technologies

 今回のプロジェクト自体は、英オックスフォード大学とオランダのトゥエンテ大学とのコラボレーションにより実施されたが、検出プロセスを可能にするアルゴリズムは、バース大学のコンピューター科学者オルガ・イスポワ博士によって作成された。

新しい測量技術により、広大な土地を数分でスキャンできるようになり、これまで人間が低空飛行の飛行機から個々の動物を観察し数えていたという方法に代わって、待望の代替手段を提供することが可能になりました。

衛星が陸地を一掃する時、数分ごとに5,000km2を超える画像を収集できるため、二重にカウントされるリスクがなくなります。必要に応じて(たとえば、雲量がある場合など)、次の地球の回転でこのプロセスを翌日に繰り返すことができます。(イスポワ博士)

 衛星監視は、データ収集中に動物を邪魔するリスクを排除し、個体数を数えるプロセスの途中で人間が怪我をすることもない。

 また、衛星は国境管理や紛争に関係なく惑星を周回できるため、国から国へと移動する動物の数を簡単に数えることが可能になる。

satellite-1030782_640_e
pixabay

・更に小さな種も検出可能になることを期待

 今回の研究は、衛星画像とアルゴリズムを使用して種を監視した最初の研究ではないが、不均一な風景、つまり開いた草地や森林、また部分的な被覆の領域を含む背景を移動する動物を確実に監視した最初の研究となった。

この種の作業は、以前にクジラで行われていました。クジラの場合は、海はすべて青いので数えるのはそれほど困難ではありませんでしたが、今回の観察は不均一な景観のため、動物の特定はより困難でした。

しかしながら、脅威に晒されている種を救うため必要なデータを収集するのに、私たち研究者は役立つ新しい最先端のシステムを見つける必要があります。(イスポワ博士)

 研究チームは、ジャーナル誌『Remote Sensing in Ecology and Conservation』に、ゾウの検出作業に関する論文を発表。彼らの研究が生物多様性を保護し、人間の活動によって引き起こされる進行中の絶滅を遅らせ、窮状にある保護活動家を支援する技術の可能性を示すこと信じていると述べている。

 イスポワ博士は、「種を救うためには、正確な監視が不可欠です。この先、宇宙からはるかに小さな種をすぐに検出できるようになれば」と、更なる研究に期待を寄せている。

elephant-2923917_640_e
designerpoint/pixabay

 なお現在、野生のアフリカゾウは、推定40,000~50,000頭が確認されているが、その個体数は干ばつや民族戦争などによる生息地の喪失や密猟により減少しており、IUCNレッドリストの絶滅危惧種に「危急種」に指定されている。

written by Scarlet / edited by parumo
「宇宙の中心で象を数える。衛星カメラとディープラーニングを使用した画期的な個体数の調査法が開発される」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧