死人に口なし!?平安時代にもあった悪質な架空請求事件に痛感する世の不条理 (2/4ページ)
「おうおう!米25石さっさと返せ!さもなけりゃ家屋敷から何もかも失うことになるぞ!」
一気にまくしたてる兼信に、老母はただうろたえるばかりでしたが、覚珍はさすが出家者とあってあくまでも冷静な態度で臨みます。
「ちょっと待って下さい。義兄が生活に困窮していた様子はなく、そのような借財を本当にしたのか、にわかに信じがたいところです。まずは義兄が借財をしたという証文を確認させて下さい」
ごく当然の対応ですが、兼信はこれに応じず逆ギレします。
「うるせぇ!部外者のてめぇにそんなモン見せる必要はねぇ!いいからさっさと米25石を返すか、今すぐ家屋敷を明け渡しやがれ!」
借財は返せ、でも証文は見せない……根拠のない言いがかりであることは明らかです。それなら、と覚珍は返答しました。
「私どもは部外者なのですね?ならば、返済を求めるのは筋違いと言うもの。もし茂興殿の借財が事実であるなら、まずはその妻である姉のところへ参られては?」
普通ならこれで完全論破……な筈なのですが、元から無理筋であることなど百も承知で来ている兼信は完全に開き直ります。
「ぐぬぬ……黙れ黙れ黙れ!大人しく従えば命だけは助けてやったものを……おぃ野郎ども、やっちまえ!」
「「「おぅ!」」」
ドカッ、バキッ、グシャ……兼信は手下どもに命じて老母と覚珍を家から叩き出し、家屋や土地の権利書をはじめ、全財産を奪い取ってしまったのでした。