危機でも成長し続ける会社と、危機に対応できない会社。その違いはどこにある? (3/4ページ)
しかし、この会社にとってはその指標を重視することが裏目に出てしまい、景気が厳しくなったタイミングで業績が悪化してしまったのだ。
なぜなら、この販売会社の顧客の中には、携帯電話へのリテラシーが低い高齢者も多かった。そのため、訪れた顧客1人ひとりに丁寧に教えることで顧客満足度を高め、顧客が新しい顧客を紹介する形で業績を伸ばしていた。しかし、導入された評価制度によって現場での効率性が過剰に重視され、自ら「強み」を潰してしまっていたのである。
そこで、松岡氏は一定の効率性は維持しながらも、顧客が友人や知人に紹介したくなるような行動をとった人が、より評価される仕組みへと変えた。
これこそ、まさに自社のコア・コンピタンスを見誤った形で制度が導入されたがゆえに起きた失敗とその改善例だ。人事の「仕組み・制度・施策」は、社員に企業理念の体現を促し、コア・コンピタンスを強化するようなものでなければならないのだ。
■危機に対応できる会社、できない会社の分かれ道松岡氏が語る、組織変革の常道は、まず組織の現状を分析し、「良い企業文化」と「良くない企業文化」をあぶり出す。そして、「理想の企業文化」をイメージし、その理想に辿り着くまでの課題を洗い出し、それをさまざまな「仕組み・制度・施策」へと昇華させ、1つひとつ実施していくことだという。
とりわけ危機を乗り越え成長し続けるためには、時々の状況を打破するための「理想の企業文化」をイメージできることが重要だ。「理想の企業文化」は、企業理念を実現し、コア・コンピタンスを研ぎ澄ますためには、社員がどんな考え方を持ち、どんな行動をすることなのかを考え抜くことで見えてくるという。
その理想を社員と共有し、社員一人ひとりが求められる考え方や行動の必要性を納得した時、企業はひとつの方向へと動き始める。その流れを促進させるものこそが、人事の「仕組み・制度・施策」なのだ。この理想の設定と共有ができるかどうかが、危機に対応できる企業と対応できない企業の分かれ道となる。
本書を読むと、マネジメントの形がまるで違うリクルート、ファーストリテイリング、ソフトバンクの3社においても、危機を乗り越え、成長し続けるための共通項があることに気づくだろう。