神に祈る南?方角を示す「東西南北」の語源は太陽の動きが影響していた!?

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神に祈る南?方角を示す「東西南北」の語源は太陽の動きが影響していた!?

「菜の花や 月は東に 日は西に」 与謝蕪村(よさ ぶそん。江戸時代の俳人)

♪菜の花畑に入り日薄れ……♪

厳しい寒さも峠を越えて、町のあちこちに菜の花が咲き始めると、いよいよ春の訪れを感じますね。

時に、方角について西とか東とか当たり前に呼んでいますが、どうして「きた」とか「みなみ」と言うのか、疑問が湧いてきました。

そこで今回は、方角を示す東西南北の語源について、その一説を紹介したいと思います。

太陽が向かってくる「東(ひがし)」の方角

東の空から日が昇る。

夜が明けて、太陽(日)が昇ってこちらに向かってくる「ひむかしかた(日、向かし方)」が訛って「ひんがし」、そして「東(ひがし)」になったそうです。

宮崎県の旧国名「日向(ひゅうが、ひむか)」と共通していますね。

太陽が去っていく「西(にし)」の方角

西の彼方へ日は沈みゆく。

東から昇った太陽は南の空を通り過ぎ、やがて去って行くのですが、その「ひいにしかた(日、去にし方)」が縮まって「西(にし)」になったと言われています。

過去を表す「古(いにしえ。去にし辺)」と同じ語源ですね。

太陽≒神様に祈る「南(みなみ)」の方角

日本における至高の太陽神・天照大神(中央最奥)。春斎年昌「岩戸神楽之起顕」より。

古来、太陽は神の威光や恩恵あるいは神そのものとして信仰されてきました。太陽が最も高く位置する時、人々は神に祈りを捧げました。

古くから神は「み」、祈るは「のむ」と表現され、神に祈る「みのみしかた(神祈みし方)」の方角が訛って「南(みなみ)」と呼ぶようになったと言います。

汚い?堅い?「北(きた)」の方角

さて、ここまでは太陽の動きに関係するシンプルな語源ですが、北については研究者の間でもこれと言った決め手に欠けているようです。

神様のおわす清浄な南の反対側であるから不浄すなわち「きたなしかた(穢し=汚し方)」が語源とも考えられていますが、北辰(ほくしん。北極星)≒君主の君臨する方角を不浄などとするでしょうか。

北極星は他の天体と異なりほとんど動かないため、天空の中心=君主の象徴とされた。

また一説には堅塩(きたし)に由来するとし、まだ精製されておらず、土なども残っている塩の塊は、雪まじりの寒々しい大地を連想させます。

ちなみに、一説には「汚し」の語源は「北無し」とされ、方角の基準となる北がわからず、秩序が乱れて見苦しい状態を指したとも言われています。

タマゴとニワトリみたいな話ですが、汚い方角だから北なのか、北がないから汚いのか、果たしてどっちなのでしょうね。

終わりに・身近な言葉に隠れた先人たちの価値観や暮らし 方角の語源まとめ

東:太陽が昇ってくる方角
西:太陽が去っていく方角
南:太陽神に祈りを奉げる方角
北:諸説あり(土混じりの堅塩が、雪の大地を連想?)

以上、東西南北の語源について紹介しましたが、日ごろ何げなく使っている言葉はどれも必ず由来があり、創り出した先人たちの価値観や暮らしぶりが偲ばれることもあるもの。

皆さんも、身近な言葉に興味を持って調べてみると楽しいですよ!

※参考文献:
大野晋『日本語をさかのぼる』岩波新書、1974年11月
水野義明『「東西南北」-方位語の基準について-』明治大学教養論集、1978年2月
日本語倶楽部 編『語源500 面白過ぎる謎解き日本語』河出書房新社、2019年8月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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