科学者の情熱が作り上げた世界一丸い究極の球体 (1/3ページ)
このツヤツヤと滑らかな球はただのオブジェなどではない。科学者とコンピューターによって徹底的に検査された末に、世界でもっとも丸いほぼ完璧な球と広く認められたすごいものなのだ。
ただの球体というなかれ、かかった費用は莫大だ。その原料であるケイ素同位体「28Si」の単結晶だけでもざっと1億円以上、球の制作には3億5000万円もの資金が投入されている。
そこまでして完璧な球体を作り出した理由はギネスに挑戦したかったからではない。1キログラムを定義するという崇高な目的のためだ。
World's Roundest Object!
・1キログラムを定義するのになぜ完璧な球体が必要なのか?
キログラム以外の計測単位は、自然の性質を利用して定義されている。たとえば秒ならセシウム原子が2つのエネルギー準位を遷移する時間が基準だし、メートルなら光がほんの一瞬の間に移動する距離が基準だ。
しかし最近までキログラムだけは物理的な物体の重さが基準だった。1799年に定められた定義では、摂氏4度の下での水1リットルの重さとされた。さらに1889年、パリにある国際度量衡局で保管されているプラチナとイリジウムの合金で作られた分銅の重さに変更された。
ところが、なぜだかその分銅の重さは安定しなかった。さらに悪いことに、このキログラム原器をもとに作られた40個の複製もまた、どれも同じ重量ではなかった。
つまりキログラムには、永遠普遍の基準がなかったのだ。ごくわずかな変動かもしれないが、高度に技術が発展した現代社会では大問題となる。
そこでこの大問題を解決するべく、アボガドロ国際プロジェクトが発足した。