“王子様”は必要なのか。ドラマ『やまとなでしこ』に隠された真意 (2/2ページ)

マイナビウーマン

実際、桜子が幼い頃に見た夢の中で、泣いている彼女に手を差し伸べてきた王子様は、お金持ちイケメン・東十条ではなく、魚屋の跡取り息子・欧介の容姿と酷似しているのだ。

物語が進むにつれて桜子は、自分の気持ちが欧介にあると認めることになるのだが、桜子はずっと「東十条か、欧介か」で揺れていたのではなく、あくまで「玉の輿に乗るという自身の欲か、欧介か」で揺れていたように思う。

さらに極端なことを言ってしまえば、お金持ちイケメン・東十条という人間の内面は、桜子にとってはどうでもいいことだったのかもしれない。

しかし私は東十条こそ、彼女が長く待ち望んでいた“王子様”だったように思うのだ。仮に桜子が東十条と結婚したとしても、彼女は幸せになっていたと断言できる。

「お金か、心か」がこの作品の大きなテーマではあるが、桜子を想う東十条の真摯さは、彼女の出生が偽りだと明かされた後でも変わらなかったことで明白である。彼はお金も心も持ち合わせた、まさしく“王子様”だった。

しかし最終的に桜子は東十条ではなく、欧介を選ぶ。それはどうしてか。

桜子には最初から、“王子様”なんて必要なかったからだと思うのだ。

■『やまとなでしこ』は、王子様と決別する物語

桜子という女性の魅力は、その並外れたたくましさにある。

超貧乏という生まれ持った運命をはねのけてひとりで漁師町を飛び出し、努力をもってその美貌をさらに磨き上げ、どんな状況であっても自分の願望に忠実に突き進む。

男性に媚びているようで、実は誰に対しても一銭たりとも自分を安売りしない彼女は、“王子様”など待たなくても自分で自分の人生を切り開いていける勇壮な女性なのだ。

故に私は、この作品は「桜子と、(桜子の中の)王子様との決別の物語」であると考えている。

欧介との出会いの中で、芽生える恋心や彼に惹かれていく自分に戸惑いながらも、まっすぐ前を向いて自分の幸せをつかみに行く彼女の姿は、最後まで清くて眩しい。

最終的に桜子は、自分の意思で欧介を選び、その後を追ってニューヨークへ飛ぶのだが、「王子様を選ばなかった桜子」がその足で選んだ未来が幸せなものであるかどうかは、ぜひその目でご覧いただきたい。

どこまでも強くて美しい“大和撫子”そのものである彼女の背中は、見る人の心にもそっと一輪の花を添えてくれるような、清々しい余韻を残してくれるはずだ。

(文:琴子、イラスト:タテノカズヒロ、編集:高橋千里)

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