“王子様”は必要なのか。ドラマ『やまとなでしこ』に隠された真意 (1/2ページ)
※この記事にはドラマ『やまとなでしこ』結末のネタバレが含まれます
「好きなドラマのヒロインは?」と聞かれて思い浮かぶ女性の中に、『やまとなでしこ』の“桜子さん”がいる。
天性の美しさを武器にして、自らの幸せを貪欲なほどまっすぐに求め続ける彼女の眩しさは、もう長いこと私の脳裏に鮮やかに焼き付いている。
『やまとなでしこ』は20年以上前に放送された作品だが、平日午後の再放送ドラマ枠で頻繁に放送されていた時期があったため、リアルタイムで見ていた世代でなくてもかなりの知名度があるのではないだろうか。
実際、私が出会ったのも中学生の頃に見た再放送だった。
最近だと、コロナ禍でステイホームが日常化した2020年7月に「20周年特別編」として2週連続で再放送されたのも記憶に新しい。
■主人公・桜子の王子様はどこにいる?
簡単にあらすじを説明すると、超貧乏な漁師の家で生まれ育った神野桜子(松嶋菜々子)が、自身の幸せ——もとい“最高級の玉の輿”をつかむために、富裕層の男性達との合コンに明け暮れていた中で、本当の恋を見つけていく話である。
自分を貧乏な生活から救い出してくれる”王子様“と出会うことをずっと夢見て育ってきた桜子は、ある夜、ひとりの男性と出会う。
彼は馬主バッチをつけたとびきりのお金持ち……と聞かされていたが、実は身分を偽って合コンに参加していた超貧乏な魚屋の跡取り息子・中原欧介(堤真一)だった。
欧介は貧乏ながらも飾らない性格で、桜子が抱えた過去の痛みや意固地を優しく溶かしていく。
しかし、桜子には自身の出生を偽って婚約してしまった、大病院の跡取り息子・東十条司(東幹久)の存在も。
揺れ動く自分の気持ちと葛藤しながらも、欧介と、東十条と、何より自分自身と向き合っていく。
■お金持ちの王子様・東十条を選ばなかった理由
この作品の主軸となるのは、すれ違いながらも心を通わせていく桜子と欧介のラブロマンスなので、お金持ちイケメンの東十条というキャラクターは当て馬のような二番手ポジションとして話が進んでいってしまう。