イケメンに幻滅。外見で判断して付き合ってはいけない理由 (2/3ページ)
実は彼は私のタイプど真ん中の顔というわけでもなかったが、そして私は芸能事務所L にもJにもあまり興味がなかったが、彼の顔面には人を惹きつけるものがあった。
陶器のようなすべすべの白い肌、高く締まった鼻、シャープな顎、きらきらと光をたたえる瞳。いわゆるど美形。ずっと見ていたかった。そして彼の隣で街を歩くのが気持ち良かった。
「今度丸一日遊ばない?」
彼の誘いに即座に飛びついた私は、初夏の海をリクエストした。あわよくば海辺であんなことやこんなこと……までは流石に考えていなかったと思うが。
初の遠出デート。ドラマで見るような浜辺で告白とか、あったらどうしよう。
電車に揺られていると、彼から「これ俺のレコーディングなんだけど聴く?」と端麗なドヤ顔でイヤホンを手渡された。
深呼吸して両耳から音を吸い込む。事務所の先輩にあたるグループの有名なバラード曲だ。当時バンドをやっていた私は、一目見て、いや一耳聴いて、良質な機材で録ったことがわかった。そして彼の歌がそこまで上手でないことも。決して下手なわけじゃない。ただそこまでうまくなかっただけ。
仔犬のような顔で感想を求める彼。私は耳からイヤホンを外せないまま、ビブラートを褒めた。
たった数分で、自分の熱がさーっと引いていったことに戸惑いながら。
■「やっぱり好きかも」その直後に起きた事件
それから海に行くまでの道のりで、そういえば音楽の趣味も違うんだな、ああ何話そうかな、と必死に頭を働かせた気がする。
海に着いても、まだ胸にもやもやが残っていた。砂浜に腰を下ろし、乾杯しても、砂をすくってみても、彼の言葉が頭に入ってこない。
私は波に飲まれているサーファーを眺めながら、ただ時が過ぎるのを待っていた。太陽が傾いてきて海が紅く染まった頃、まばゆい西陽に右手をすかせてみると、彼の左手がそっと重なった。
私の胸はどきんと高鳴り、久しぶりに体に血が巡るのを感じた。