「全てのページが伏線」――道尾秀介が語る新作『雷神』と小説のポテンシャル(2) (2/5ページ)
最初に標準語で書いてから、新潟出身の方に翻訳してもらうというやり方もあるのですが、それだと自分の作品ではなくなってしまいますし、作品が持つ熱量も変わってきちゃうんですよね。だから、事前に言葉を覚えて、新潟の人になりきって、セリフを書くことを心掛けました。その人になりきって書くと、思い入れも変わりますしね。
――その方言も一つ、物語を左右するポイントになります。
道尾 :そうですね。それも自分で勉強しなければ思いつかないものでした。
――本作は「以前の自分には不可能だった」とコメントされていますが、どういう点でそう感じたのでしょうか。
道尾 :昔の自分だったら、この倍くらい長い小説になるか、読者が読んでも混乱してしまう小説になっていたと思います。でも、デビューして17年経って、複雑に絡み合っていながらも、誰が読んでもすっと理解できる小説が書けるようになったというところですね。
――書き終わった瞬間、手ごたえがあったのではないでしょうか。
道尾 :ありました。ラストの文章を原稿の段階から出版するまで変えなかったのは、初めてかもしれません。結びの文章は大事なので、原稿を読み直したり、ゲラをチェックするうちに変わったりするんですよ。文言自体がまるっきり違うときもありますし、句読点を変えるだけのときもありますし、いろいろあるんですけど、『雷神』はそれが全くなかったんです。
■次々と新しい表現に挑戦する。そのアイデアの源泉とは?――また、「僕が理想とするミステリのかたちがいくつかあるのですが、そのうちの一つが書けました」と公式にコメントを寄せていましたが、理想とするミステリのかたちとは具体的にどのようなものなのですか。
道尾 :よく聞かれるのですが、なかなか言葉にできないんです。