「全てのページが伏線」――道尾秀介が語る新作『雷神』と小説のポテンシャル(2) (4/5ページ)
すでにもう道尾さんの中に実体験という材料があるというわけですね。
道尾 :ただ材料がありすぎて、どれがピッタリはまるのかが分からないこともあります。マッチする部品同士を見つけるのは大変ですけど、ピタッとはまった時にできあがるものが、どんどん大きく強固になっている実感はありますね。
――素材をストックしていくということは、日々の生活をつぶさに観察しないといけないように思います。
道尾 :意外と日々を楽しんでいれば憶えているものですよ(笑)。僕は楽しみながらいろんなことをやっていて、それが全部小説につながっている感覚があります。
人付き合いも大事です。『雷神』の主人公の幸人は小料理屋の主人で、お手伝いをしている夕見が客からカワハギの肝和えに合う日本酒を聞かれて、「酔鯨」をすすめるんですけど、それも行き着けの和食屋のマスターに教えてもらったことですし。そこからまた話が膨らんで、小説に反映される。
――日々の中にヒントがあるわけですね。今後、小説を通して挑戦したいことはありますか?
道尾 :大枠としてはさっき言ったように、必ず新しいことを取り入れる。それに一作一作のクオリティを、新しく取り入れた仕組みの中で最大限に高めていくということですね。それを確実にやっていく。
小説の持つポテンシャルはすごく大きいものです。小説の中身自体は17年やってきて、自信はあります。次はそれをよりすごいものにしていくにはどうすればいいのか、どう新しいものを入れ込んでいくのかということに挑んでいきたいですね。
――『雷神』をどんな人に届けたいとお考えですか?
道尾 :いろんな世代、いろんな立場の人が楽しめる小説ができたと思っています。老若男女登場して、その中の誰に感情移入するかによって、この物語の印象はまったく変わってくるので、ぜひいろんな人に読んでもらって、感想を聞きたいです。