「全てのページが伏線」――道尾秀介が語る新作『雷神』と小説のポテンシャル(2) (3/5ページ)

新刊JP

あえて言葉にするなら、もし他の作家さんが書いて、自分が読んだらがっくりと肩を落として小説を書く気がなくなってしまう、そんな作品が、理想のミステリの一つでしょうか。

『雷神』はそういう作品になってくれた。神様が味方してくれたのか分からないけれど、自分では書けないと思っていたものが書けてしまったという感覚です。

――そうなると、一つの到達点を経て次の作品をどう書いていくかという話になると思います。これから書いていきたいこと、挑戦してみたいことはありますか?

道尾 :毎回、それまでの小説になかった新しいことを入れ込むつもりで書いています。本作では、あの画像のページなどですね。読者はそのページを素通りしてもいいし、何か分かることはないかチャレンジしてみてもいい。

また、今年10月に集英社から出る予定の本は6章構成になっているのですが、章を読む順番を自分で自由に決められるようになっています。しかも章ごとに上下反転して印刷されていたりして、出版社としても初めての試みのようで、いろんな部署に確認を取ってもらったり、かなり大変でした。

――それはとてつもない試みですね。

道尾 :6篇から成るので、720通りの読み方ができます。読者によって全く違う話に見えたり、読み心地が違ってくるという小説です。

――まさに小説でしかできないことですね。そうしたアイデアはどのように考えられているのですか?

道尾 :先ほども話したように、夕見という名前やFMラジオと流れ星の関係も、人生でたまたま出会ったこと、勉強したことがつながりあっているわけですよね。

アイデアのおおもとには実体験があるんです。その実体験を小説に落とし込んで、さらに調べたり、いろんな要素を物語に入れて膨らませていく。そうすると、大きな木のように枝葉がのびて広がっていくので、わざわざアイデアの元となるものを探す必要はないんですよね。

――なるほど。

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