『さよならドビュッシー』作家・中山七里インタビュー「作品に向き合う人間力」 (2/2ページ)

日刊大衆

4人全員を納得させるのは無理だけど、3人ならできるかもしれないと思ったんですね。それで、「まったくタイプの異なる2つの作品を応募する」という作戦を考えついたんです。

 そんな狙いで書いたのが、クラシック音楽をテーマにした『さよならドビュッシー』と、猟奇犯罪を扱った『連続殺人鬼カエル男』でした。作戦通りに両方が最終選考に残り、『さよなら〜』が大賞を受賞。僕は、48歳で作家としてデビューすることができました。

 ただ、僕はずっと読む側にいたので、受賞した作家に読者が注目するのは最初だけ、ということが分かっていました。賞を獲っても、1年後にはまた別の人が出てきます。だから、新人作家の“賞味期限”は実は1年だけ。この間に、なるべく多くの作品を書き、名前を覚えてもらわないとダメなんです。

 僕も、とにかく量をこなしました。デビュー当初はサラリーマンとの二足のわらじだったのですが、仕事を断らずにいたら、どんどん睡眠時間が短くなっていって……。結局、2年で会社を辞めましたが、そうしたら、ますます寝ていられなくなった(笑)。抱えている連載が、月14本になったこともありましたね。

 僕は今年で還暦ですが、“のんびりしたい”という気持ちはまったくありません。物書きとして、「死ぬまでにどれだけたくさん、どれだけいいものを書けるか」ということを指標としていますから、今後も皆さんが読みたいものを書き続けていきたい。パソコンの前で死ねたら本望ですね(笑)。

中山七里(なかやま・しちり)
1961年12月16日、岐阜県出身。2009年、『さよならドビュッシー』で『第8回このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、作家デビュー。幅広い作風で知られ、ラストで読者を驚かせる展開が多いことから、「どんでん返しの帝王」の異名も。『岬洋介』シリーズ、『御子柴礼司』シリーズ、『ヒポクラテスの誓い』シリーズなど人気作を多数抱え、映像化された作品も数多い。

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