乃木坂46中田花奈、伊藤純奈、寺田蘭世の個人PV作品が与えた新たなアイドルのイメージ (3/3ページ)

日刊大衆

 親友同士のささやかな関わりを描くこの作品は、互いの「壁を超える」ことや未来への展望を主題にしつつ、同時に主演の二人が「アイドル」として当時置かれていた立場を下敷きにしたものでもある。

 乃木坂46に2期生として加入した彼女たちは、グループには参加しながらも、前作11枚目シングルの制作時点までは研究生という肩書のまま、不安定な立場に置かれていた。今日のように、新たに加入したメンバーが乃木坂46内で位置を得てゆく道筋がはっきり確立していたわけではなかったことを考えれば、グループの歴史上、最も先の見えない立ち位置であったともいえよう。

 このペアPVはそうした研究生期間を経て、彼女たちが初めて正規メンバーとして制作に参加したシングルで企画されたものだ。だからこそ、まだ漠然とした未来を語る主人公たちの姿には二重の意味が生まれる。

 またこの作品中、二人の間にあった壁は「ボーダー」という言葉でも語られる。前シングルで、研究生としての彼女たちに託された楽曲のタイトルこそが「ボーダー」であったことを考えれば、本作で描かれる「壁」の融解は、位相を変えて彼女たちの立場の変化をあらわすものとしても響く(銭湯の真ん中で左右を隔てている「壁」を伊藤が乗り越える様子もまた、いうまでもなく「ボーダーを超える」ことの暗喩である)。

 他方、ドラマのなかで伊藤が口にする「卒業」という言葉は、文脈上おそらく正規メンバーとしての二人の未来を意図するものであったはずだ。けれどもまた、彼女がグループからの旅立ちを目前にした現在、あらためて再見することで、その「未来」が指すものはさらに多層的になる。個人PV/ペアPVが時を超えて新たな意味を獲得するのは、そのような瞬間だ。

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