「あの娘、生意気じゃない?」欲に目がくらんで同僚を惨殺した女官・長野女王のエピソード (2/3ページ)
結婚して家庭を持ち、落ち着きの出てきた女性を、まだ若い長野女王の教育役につけたのでしょうか。
しかしある時、二人の部屋へ新入りの船延福女(ふねの のぶとみのむすめ)がやって来ると、様子が一変。
「ねぇ出雲。あの娘、ちょっと生意気じゃない?」
「……はい。いくら同じ女孺(めのわらわ)とは申せ、殿下に対する態度がなっておりませぬ」
この場合「態度がなっていない」とは「何が何でも気に食わない」と同義であり、船延福女にじっさい非があったか否かは、もはや是非に及ばぬところ。
「しかも見た?あの娘、大した家柄でもないくせに、上等の着物を持っていたわよ」
恐らく、苦しい生活の中から少しでも娘によいものを着せてやりたい、一生懸命に奉公して、よりよきご縁に巡り合って欲しいという親心だったのでしょう。
しかし、それが仇となって長野女王らの標的にされてしまいます。
「あのような美々しき御召し物は、殿下にこそお似合いにございまする」
「……そうとなれば、とるべき道はただ一つね」
「はい!」
その夜、二人は寝静まった船延福女を絞め殺してしまいました。
殺した船延福女の顔の皮を……「……殺(ヤ)ったわね」
「はい、これであの衣は殿下のもの。でも……」
「あの死体は、流石にまずいわよね……」
船延福女の遺体を放置しておく訳にもいかないので、二人は彼女の顔の皮を剥いで、内裏の外へ遺棄したのでした。