生き残るのは「ナンバー1」か「オンリー1」か 生物たちの生存戦略 (1/2ページ)

新刊JP

『はずれ者が進化をつくる』(筑摩書房刊)
『はずれ者が進化をつくる』(筑摩書房刊)

オリンピックのテーマにもなった「多様性」。人間の世界には、民族や文化、地域、価値観などさまざまな「多様性」がある。しかし、生物の世界をのぞいてみるともっとすごい。そこには多様性に満ちた世界が広がっている。

生物たちの種の多様さは何を示しているのか。
そして、多様な生物たちから私たち人間はどんなことを学べるのか。

静岡大学大学院教授で農学博士の稲垣栄洋さんが執筆した『はずれ者が進化をつくる』(筑摩書房刊)には、「個性」をテーマにしながら、生物の生存戦略を学ぶことができるエッセイがつづられている。

■生き残るのは「ナンバー1」か「オンリー1」か

生物の世界は弱肉強食。ナンバー1の者だけが生き残るという考えがある。一方で生き残るためには「オンリー1」の方が大事だという考えがある。

「ナンバー1」か「オンリー1」か。
生物たちの世界は、この問いに対して明確な答えを持っていると、稲垣さんは述べる。その答えとは「ナンバー1しか生きられない」ということだ。

この法則を証明する「ガウゼの実験」と呼ばれる実験がある。
旧ソビエトの生態学者であるゲオルギー・ガウゼは、ゾウリムシとヒメゾウリムシの2種類のゾウリムシを1つの水槽で一緒に飼う実験をした。最初は共存していた2種だったが、やがてゾウリムシは減少し始め、最後にはいなくなってしまった。

これは、2種類のゾウリムシがエサや生存場所を奪い合い、片方が滅ぶまで競い合った結果である。このように自然界では、激しい競争が日々繰り広げられている。つまり、「ナンバー1」が生き残る世界なのである。

しかし、その一方でこの世界にはたくさんの生き物がいる。もし、ナンバー1の生き物しか生き残れないとすれば、この世の中にはそのナンバー1の1種類しかいないはずだ。

そのカギを解くのが「オンリー1」である。
ガウゼの実験には続きがあった。ゾウリムシの種類を変えて、今度はゾウリムシとミドリゾウリムシの2種類で実験をしてみた。すると、この2種は1つの水槽の中で共存し続けたのである。

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