スーパーで、路上で…認知症を持つ人からは世界がこう見える (1/2ページ)

新刊JP

スーパーで、路上で…認知症を持つ人からは世界がこう見える(*画像はイメージです)
スーパーで、路上で…認知症を持つ人からは世界がこう見える(*画像はイメージです)

今朝、目が覚めると「おっと遅刻遅刻。早く会社にいかなければ」と思い、10年前まで勤めていた会社に足が向かいました。その……わたしはすでに会社を退職しているのに、です。
バスに乗り遅れまいと急いで歩いたのですが、歩いている途中に結局、自分がどこに向かっていたのか、なぜ歩いているのか忘れてしまいました。

これは『認知症世界の歩き方』(ライツ社刊)の一節。認知症を抱えている「わたし」から見た世界だ。認知症による徘徊で行方不明になる人は年間約1万5000人にものぼるとされるが、本人の認識を(一例ではあるが)言語化すると、こんな具合になるようだ。

■認知症を抱える人からは世界がこう見える

ここからわかることは、他人からは無目的に歩き回っているように見えても、本人は「出かける目的」があって外出しているということだ。

一方で、家を出る時は明確だった外出の意図が途中でわからなくなったり、目的地を思い出せなくなってしまうことがあるのも認知症の特徴だ。それゆえに外出の理由を説明できず、家族や周囲の人から見ると、あてもなく歩いているように見えてしまう。

もう一つわかることがある。認知症を持つ人が出かける目的は、仕事や買い物、友達に会いに行くなどさまざまだが、大半は現在ではなく「過去の習慣」に基づいているという。上の例のように、たとえ10年前に退職した会社だったとしても、本人の中では当時の記憶が呼び起こされているため、出勤するのは当たり前のことなのだ。

このように過去と現在の区別がつきにくくなるのが徘徊のひとつの要因だといえるが、同じ理由によって、自分の家なのに、夜になると「そろそろおいとましますね」と立ち上がって出て行こうとする行動も起こりうる。

過去に住んでいた家の記憶が強く思い出され、現在の自宅の記憶の上に重なってしまうことで、今いる場所(自宅)が他人の家だと考えてしまうのだ。また、空間や人の顔などを認識する機能に障害が起き、その場所を自宅だとわからなくなってしまうことも、この行動の要因として考えられるという。

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