やっぱり怖い。恋愛に一歩踏み出せない理由 (2/2ページ)

マイナビウーマン

対する沙絵はというと、耳が聞こえなくなってからはうまく他人と関わることができなくなり、きつい態度や壁を作ることで身を守るしかなかった孤独な女性だ。

臆病で、天邪鬼で、大事なものを失う痛みを知りすぎてしまった彼女が、まっすぐに注がれる櫂の愛情と向き合えるようになるまでの葛藤が全編を通して丁寧に紡がれている。表情豊かに全身を使って語られる彼女の「手話」は、このドラマの見どころのひとつだ。

■沙絵が恋愛に一歩踏み出せない理由

いつかこんな面倒な自分は櫂に嫌われてしまうのではないかという不安から、彼の愛情を素直に受け入れることができずにいる沙絵が茜にその心情を吐露するシーンに、こんな言葉がある。

「私が耳聞こえないせいじゃないよ 私がただの女の子だから」「男の子好きになるとさ ただの女の子になっちゃうんだよね」

手話を使ってそう伝える沙絵に、茜は優しく「うん、分かる」と笑う。何気ないシーンだが、私はこのシーンが好きだ。

沙絵は櫂と向き合うことができずにいる理由を、自身の耳のせいにしているのではなく、自分自身の心の問題として捉えることができているのである。

耳が聞こえないことを理由に様々な困難に直面し、時にはそれを盾にして自分の身を守ってきた沙絵。私にとってどこか遠い存在に感じていた「耳が聞こえない」という肩書きを背負った沙絵が、この瞬間、とても身近な存在に思えてくる。

誰かと恋愛をしていく中で感じる痛みや悩みの本質は、きっとどんな肩書きを背負っていても同じなのだ。

私はこんなにキラキラした大学生活は送れなかった。けれど、このドラマを見ているとどこか懐かしい気持ちがふっと湧き起こるのは、作品に散りばめられた彼らの悩みや葛藤に、少なからず自分も共感できるからだろう。

櫂と沙絵を含めた5人の大学生の甘酸っぱい青春の物語を楽しみながら、たまには自分の学生時代を振り返ってみるのもいいかもしれない。

(文:琴子、イラスト:タテノカズヒロ、編集:高橋千里)

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