植物が照明になる未来。光を蓄え、繰り返し充電できる発光植物が作り出される

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植物が照明になる未来。光を蓄え、繰り返し充電できる発光植物が作り出される
植物が照明になる未来。光を蓄え、繰り返し充電できる発光植物が作り出される

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 人工的な光でライトアップされた木々や植物はなんとも幻想的だが、近い将来、自ら光を放つ植物が町を明るく照らしてくれるかもしれない。

 米マサチューセッツ工科大学で生み出された植物は、太陽やLEDの光を蓄え、自ら明るい光を放つことができるのだ。また連続して光を充電することもできる。

 この技術を応用すれば、植物をベースにした生きた照明を作ることができるかもしれないそうだ。

・植物の組成に改変し「発光」する機能をつける研究
 研究グループのマイケル・ストラーノ教授は、「植物ベースの照明へ向けた大きな一歩です」と語る。

 ここ数年、ストラーノ教授は「植物ナノバイオニクス」に取り組んできた。植物にさまざまな粒子を組み込んで、新たな機能を獲得させる研究だ。

 その最初の成果が、2017年に発表された光る植物だ。それはクレソンに発光酵素「ルシフェラーゼ」と生物発光の源である「ルシフェリン」のナノ粒子を組み込んだもの。このホタルの光源でもある化学物質のおかげで、クレソンは数時間も光を放つことができた。

 ただし、発光クレソンの光は、文字を読むために必要な明るさの1000分の1というごく微弱なものでしかなかった。

 ストラーノ教授はこの弱点を克服すべく、更に明るくなるよう植物の組成の改変を試みていった。

 

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photo by iStock

・明るさが10倍となった第二世代の発光植物が誕生
 そこで研究チームは、電気回路の一部で電気を蓄え、必要なときに放出することができる「コンデンサ」を使うことを思いついた。 光る植物の場合、「光のコンデンサ」を使えば、光子の形で光を蓄えておき、時間の経過とともに徐々に放出することができる。 研究者たちは、この「光のコンデンサ」粒子を作るための、「蛍光・燐光(phosphor)」物質を使うことにした。

 ただし光コンデンサの粒子をいきなり植物に入れると傷つけてしまうので、まずはシリカでコーティングする。

 その上で「気孔」(葉の表面にある孔)から注入。すると「葉肉」というスポンジのような層に蓄積され、光コンデンサ粒子の薄い膜が形成される。

 光コンデンサ粒子入りの植物を太陽やLEDの光で照らすと、この膜に光子が蓄積され、それから少しずつ光を放つようになる。

 実験として青色LEDを10秒照射すると、1時間発光できたとのこと。しかも、そのときの光は第1世代の10倍もの明るさだ。

 また少なくとも2週間は連続して光を充電でき、植物から蛍光体を回収して再利用することもできる。

 さらに10日間の観察では、植物はきちんと光合成を行なっており、気孔からの水分の蒸発が妨げられるようなこともなかったそうだ。

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image credit: Massachusetts Institute of Technology・様々な植物で機能
 光コンデンサ粒子は、クレソンだけでなく、バジルやタバコといったさまざまな植物で機能する。

 ハスイモでも発光することが確認されている。ゾウの耳を連想させることから(エレファント・イアー)とも呼ばれるタイに生息するハスイモは、1.5メートルを超える大きな葉が特徴で、屋外の照明として利用するにも十分な大きさがある。

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 照明機器の代わりに発光植物が植えられ、街を明るく照らしてくれる。そんな未来が訪れるのかもしれない。

 この研究は 『Science Advances』(21年9月8日付)で発表された。

References:The next generation of glowing plants | MIT News | Massachusetts Institute of Technology / written by hiroching / edited by parumo


追記(2021-09-29)本文を一部訂正して再送します。

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