過去からの復讐がテーマとなった日本の民話やグリム童話と東京五輪 (2/5ページ)
「おのれ、騙り者め!」
庄屋は怒り、その場でカツの首をはねた。すると、それまで黙っていた髑髏が突然、美しい声で、「やっと、これで恨みが晴れました。私はカツに殺されたイキでした。仇を庄屋様に打っていただいて、安心しました」と歌った。
■似たような話はグリム童話にもあった
歌う髑髏、しかも歌に乗せて理不尽な形で命を奪われてしまったことを暴露する話は、福岡県の鞍手郡に限ったものではない。友人知人に限らず兄弟姉妹・継母と継子・夫と妻・主人と召使い、または見ず知らずの者同士などとの対立構造をモチーフに、日本国内のみならず、世界中に多く見られるという。例えばグリム昔話にも、類似の話がある。
ある国の王様が、農民の畑を荒らしたり、家畜や人を襲ったりする大イノシシに悩んでいた。そこで、褒美として自分の一人娘を嫁として与えるとお触れを出した。そこへ、貧しい兄弟が名乗りをあげた。兄は普段から小ずるいところがあり、なおかつ威張ってばかりいたが、弟はお人好しで、のんびりした性格だった。大イノシシが棲む森に2人がたどり着いた時、兄は太陽が沈む方から、弟は太陽が出る方から入った。弟がしばらく歩いていると、向こうから黒い槍を持った小人がやってきた。小人は弟に、「おまえは悪気がなくて気立てが優しいから、この槍を与えよう。これがあれば、イノシシを退治できる。おまえも怪我をすることはない」と言って、去って行った。
またしばらくすると、イノシシが弟めがけて一目散に突進してきた。弟は武芸が得意なわけではなかったが、槍を一心不乱に振り回していると、うまくイノシシに突き刺さり、絶命した。そこで弟はイノシシの死骸をかついで、森の出口に向かって行った。
■理不尽に対する過去からの復讐
一方、「太陽が沈む方」の入り口には、家が一軒あった。そこでは人々が大勢集まり、踊ったり、酒を飲んだりしていた。兄は「イノシシがすぐに逃げ出すことはあるまい」と、一杯景気づけをしていた。そこに、弟がイノシシをかついで歩いて行くのを目にした。兄はうらやましいやら、妬ましいやら、胸が張り裂けそうになった。
そこで慌てて弟を呼び止め、一緒に一杯やろうと誘った。