いびつな家庭環境から生まれた一作の小説。作家が伝えようとしたこととは? (2/3ページ)
その父は全然しゃべらない人で、コミュニケーションの手段として暴力をふるったりしていたんです。暴れ出すと本当に手出しができない。そんな人でした。
そんな父が脳梗塞で最後の言葉もなく死んでしまった。亡くなる1週間前に面会をしたときに、どういう教育方針だったのか聞いたんですけど、答えられなくて。すごく自分勝手な父親だったと今でも思います。
ただ、それは不器用の裏返しでもあると思うんですよね。曜の父親も不器用で、自分のことでいっぱいいっぱい。母親を亡くして、一人になった曜に対して突き放すような言葉を言ってしまったのも、人間的に未熟であり、子どものことをしっかり理解していなかったからなんですよね。
――曜のキャラクターをつくるうえで、一番気を付けたことはなんですか?
松谷:あまり美青年にならないように気を付けました。それに、私自身勉強があまりできなくて、クラスの中でも後からついていくようなタイプだったのですが、そういった自分の性格と重ねましたね。
――では、曜に対して感情移入しながら書かれた?
松谷:そうですね。私だったらどうするだろうと思いながら書いていました。
――本作の物語の構成としては、基本的には曜の独白で進んでいきます。ただ、その合間に関係する人物の独白が差し込まれていますが、そういった構成にしたのはなぜでしょうか?
松谷:曜一人だけだと、あまりにも独りよがりで、物語が狭まると感じたためです。もともと、登場人物もそんなに多く出てくるわけではなかったのですが、人間らしく恋もした方がいいと編集者さんからアドバイスをいただいりして、広がっていったという感じですね。
――先ほども少しお話しましたけど、曜の人生は壮絶ですよね。高校で母親をなくし、父親や親戚からもネグレクトされてしまいます。彼の孤立、孤独を描くというところで、松谷さんご自身の中でモチーフになったものはあったのでしょうか。
松谷:この物語を書くことになったきっかけの一つが、実はコロナなんです。