いびつな家庭環境から生まれた一作の小説。作家が伝えようとしたこととは? (1/3ページ)

新刊JP

『泥の中で咲け』(幻冬舎刊)
『泥の中で咲け』(幻冬舎刊)

もし過ちを犯してしまったとしても、どんなに人生に挫折してしまったとしても、人はやり直すことができる。

そんな強いメッセージが込められた小説が『泥の中で咲け』(松谷美善著、幻冬舎刊)だ。
本作は家族からも見放され、孤独になってしまった一人の青年の半生を追いかけていく、転落と再生の物語である。

今回は作者の松谷美善さんに、ネグレクトや孤立といった現代的なテーマを内包している本作を通して何を描こうとしたのか、お話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■主人公に自分を投影しながら物語を書いた

――本作は3作目となる小説です。これまでの2作でも親子関係を書かれてこられた中で、本作も親子が大きなテーマの一つになっていると思います。そのテーマの設定についてまずはお聞かせ願えないでしょうか。

松谷:親子って、人間の集団における一番小さな核ですよね。でも、その関係が上手くいっていない人って多いんです。それは私自身も経験しているのですが。

ただ、この『泥の中で咲け』という小説は、もともと親子の話ではなかったんですよ。最初は、坂本曜という10代そこそこで孤独になってしまった若者が、どうやって一人で生きていくのかということを描こうとしていたんですよね。

でも、曜は一人で生まれてきたわけではないし、見捨てられたとはいえ、家族もいる。そんな曜について、私は自分を投影して書こうと思ったんです。

――坂本曜という主人公は重い運命を背負わされていて、人生において辛いことがたくさん起きますよね。それは松谷さんのご経験によるものが大きいということですか?

松谷:作中で曜は犯罪に関与したりしますけれど、もちろん私はそういう経験はありません。ただ、両親との関係――特に父親との関係ですよね。そういったところについては、自分と曜を重ねる部分はありました。

曜は母親を脳梗塞で失っていますが、私の場合は父親が脳梗塞で亡くなっています。

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