「人はどこからでも生き直せる」一人の青年の転落と再生に込めた作家の思いとは (2/3ページ)
松谷:確かにこの社会にはいろんな人がいて、相容れないこともあります。でも、もう少し寛容な社会になれば、立ち直れる人も増えるように思うんです。
――ただ、逆に言えば、自分を突き放してくる人ですとか、理解してくれない人ばかりが周囲にいると、以前の曜のように悪い道へと足を向けてしまう可能性もあるわけですよね。
松谷:曜の場合は、あまりにも幼くて無知だったということもありますが、基本的にはどういう人に出会うか、そしてどう接するかで、大きく変わってくると思いますね。
――もう一つうかがいたいのですが、作中で曜がウイルス性の感染症にかかります。これはコロナウイルスのことですよね?
松谷:そうですね。まさに現在の状況を投影しています。
――彼は重症化してしまい、死の淵をさまよいます。このエピソードを通して伝えたことはなんだったのですか?
松谷:誰でもこうなってしまう可能性があるということです。もちろん感染を防ぐ努力はすべきだと思うのですが、やはりマスクをしていても感染するときは感染します。また、ワクチン接種をしていてもブレイクスルー感染の可能性があるといいます。今(11月中旬)は感染者が落ち着いていますが、それでもゼロになってはいません。
そういう状況の中で、自分は健康だから大丈夫だと思っていても、いつ曜のようになるかは分からないんだよということを伝えたいと思っていました。
私自身、慢性の疾患で大きな病院にかかっていて、大きな手術も2、3度経験しています。周囲からは「どうすればそんな大きな病気にかかるの?」と聞かれるくらいなんですが、それは自分が健康だと思っているからそう聞いてくるのだと思うんですよね。でも、ちゃんと体をくまなく検査をすれば、大きな病気が見つかるかもしれません。それは誰にも起こりうることだと思うんです。