「人はどこからでも生き直せる」一人の青年の転落と再生に込めた作家の思いとは (1/3ページ)
もし過ちを犯してしまったとしても、どんなに人生に挫折してしまったとしても、人はやり直すことができる。
そんな強いメッセージが込められた小説が『泥の中で咲け』(松谷美善著、幻冬舎刊)だ。
本作は家族からも見放され、孤独になってしまった一人の青年の半生を追いかけていく、転落と再生の物語である。
今回は作者の松谷美善さんに、ネグレクトや孤立といった現代的なテーマを内包している本作を通して何を描こうとしたのか、お話をうかがった。その後編をお伝えする。
(新刊JP編集部)
■一番大切なテーマは「人はどこからでも生き直せる」――誰もが坂本曜のようになる可能性がある、と。
松谷:そうです。人生にくじけてしまう時ってあるじゃないですか。私の身近にも、立派な大学を出ていながら社会でくじけてしまった人はたくさんいます。誰もが順風満帆に生きることはできません。
でも、自分が弱者になってしまったとき、人生にくじけてしまったときに、どのように立ち直っていくかということが大事だと思うんです。それが、この小説に込めた「人はどこからでも生き直せる」という一番大切なテーマなんです。
――「人はどこからでも生き直せる」というテーマですか。
松谷:そうです。でも、生き直すには、一人の力では難しいものがあります。そこは誰かにきっかけを作ってもらうことが必要で、曜の場合は、自分が犯罪をおかして、その裁判が結審するときに来てくれた父親であり、叔父なんですよね。彼らが曜をしっかり受け止めてくれたからこそ、生き直すことができた。
――あとがきに「間違いを犯した人を責めるのではなく許し、話し合える社会になればよいですね」とつづられていましたが、まさにそのシーンを体現している言葉だなと。