カネが欲しいのか、命が欲しいのか?江戸時代、強盗を改心させた七里禅師のエピソード (2/3ページ)
ここで常人なら悲鳴を上げるなり、逃げ出すなり、あるいは咄嗟の反応でつかみかかるなりするのでしょうが、七里禅師はどこ吹く風。
「お前さんは、カネが欲しいのか。それともわしの命が欲しいのか」
まるで爪楊枝でも眺めるような目つきの七里禅師に、強盗は眦(まなじり)を釣り上げました。
「カネに決まってるだろ!さっさとよこせ、殺すぞ!」
ぐいと突き出された刃先を眺めると、七里禅師は重ねて尋ねます。
「カネならくれてやらんでもないが、カネをもらって何を買うんじゃ」
「何だっていいだろ!早く出せ!」
強盗は苛立って出刃包丁を突き出しますが、顔色一つ変えない七里禅師が少し薄気味悪くなり、「実は、ガキの病気で薬代が要るんだ」と洩らします。
すると七里禅師は奥の戸棚を指さして、
「何じゃ、そういうことならそこの戸棚にあるから、必要なだけ持っていけ」
「お、話の解る坊主だな」
あっさり要求が通って少しホッとしたのか、強盗はいそいそと戸棚を物色。確かに、銭の包みがありました。
「ただ、わしも一文無しでは米が買えぬから、少し残しておいとくれよ」
「あいよ」
カネさえ手に入ればもう用はない……足早に立ち去ろうとする強盗を、七里禅師が呼び止めます。
「それともう一つ」
「ん?何だよ、注文の多い坊主だな」
そんな強盗の態度を、七里禅師はピシャリと叱りました。